バルコニーに消えゆく
ぼくは毎朝1Kの小さなアパートで目を覚まします。
眠い目を擦りながら小さなバルコニーに出てたばこを吸いながら外の様子をボーッと眺めるのが休日朝のルーティンです。
人気の少ない閑静な住宅街が朝の日差しに照らされ、1枚の美しい写真のように写り、暑くもなく寒くもない秋のまどろみが心に充足を与えてくれます。
陽気に照らされたぼくの脳は過去の世界へのトリップをはじめます。
ぼくは長く続いた人間関係が少なく、仲良くなったけどもう連絡をとっていない人、連絡をとれない人がたくさんいます。
ぼくの世界から消えてしまった人たちのことを思い出しながら、あの人は今なにをしているんだろう、あの時こうしていればよかったな、等の考えにふけります。
大人になるまでに失う人間関係は多いです。
みんな当たり前のようにその現実を享受しているように見えますが、ぼくにとってはなかなか苦しいものです。
いろんな人が消えていきました。
学生の頃の友達、会社の同期、SNSで意気投合してリアルでも遊ぶようになった友達、大好きだったあの子、
声に出しながらあの人の名前をつぶやきます。
名前はぼくの身体から出ると宙へと浮かび、たばこのけむりと共に、現実世界との境界を曖昧にしながら消えていきます。
あれ?そういえばあの人の名前なんだっけな?
思い出そうとしますがモヤがかかったようで思い出せません。
名前がまたひとつ、消えました。