【刀ミュ】静かの海のパライソ -Formation of パライソの歌声の彩-(前編)
The master pieceと呼びたくなるライブアクトがある。何年経っても眩しくて、恋しくて、振り返るたびに泣きたくなるような。
でも、基本としては「最新の刀ミュ」をフラットに見つめていきたいし、どこまでも高みを目指そうとする「最新の彼ら」を一番好きになりたい。
いつだって「最新が最高」を願っている。切に。
起きている時に見る夢を白昼夢というなら、今回の演目で奏でられた歌たちがまさにそれ。
「Free Style - EP」を聞く時は目を閉じる。
視覚も明かりも要らない。この音だけでわたしの頭は飽和する。
おことわり
※静かの海のパライソ2021の感想です。初日配信、東京公演、大阪公演を元にした感想記録のようなものです
※一部、静かの海のパライソ(2020年版)の情報に抵触する記述があります
※歌や音楽に関する話をしていますが、筆者は専門家ではありません。本記事は一個人の経験に基づく感想であることを予めご了承ください。
※いつものごとく、歌に色を感じる人が書いた記事です。共感覚について詳しくはこちらに書いてます↓
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1.大倶利伽羅(演:牧島輝)
しなやかさも頼りがいも日々増していく。黒き龍の冬めく吐息。
オープニングの「刀剣乱舞」からガッツポーズなんですよ。わかる?
「♪俺は戦い抜く 刀として生き 死ぬまでだ」のラストのロングトーン、中声から低声へ、ミックスできれいに遷移しつつビブラートがかかってるのがわかります。あぁ……ほんと、とてもしなやかで美しくなられた……
以前、牧島氏の大倶利伽羅の歌の好きな部分を「銀の星を砕いて散らして夜空のよう」と私は書いたことがある。んだけど、今回の公演では見たことがないようなボーカルパフォーマンスがあちこちに見られて。
たった8カ月程見なかっただけで、こんなにこちらの感じ方や印象が変わるとは思わなかった。もしかしたら、自分は過渡期の牧島氏に立ち会えてるのかもしれない。そんなことを思ってどきどきしてしまう。
そんな大倶利伽羅の1部ソロ「白き息(仮)」。とんでもない歌だった。
初日からもうずっとぼろぼろ泣いてしまっている。感情が溢れて止まらない。
そもそも曲がいい。特にサビのメロディがキャッチーで綺麗で……あの美メロを大倶利伽羅は軽々乗りこなしてるんだけど、それだけじゃない。
美しいとか、綺麗とか、かっこいいとか、それだけじゃない。
「♪祈りの言葉も 捧げる花も 持たぬ俺はただ 白き息を切らし この身を鍛えるのみ」
センテンスが生きていた。「祈りの言葉も」ってところが抜群によかった。「こぉとぉばも」っていうところ。素晴らしかった。「白き息を切らし」に織り交ぜられる生々しいブレスの音もたまらなくて、そしてアトランダムに揺れるビブラートにも心が震えた。
あんなに何もかもそぎ落としたようなピュアな声色を出すだなんて。
鶴丸へ手向けるような言葉を心底大事そうに歌うのも、泣けて泣けてしょうがない。
あんな繊細な歌をまた聞いてみたいな。
今のところ初日が一番好きなのだけど、更新されたらいいなぁ。
牧島氏の大倶利伽羅の歌に銀色のちかちかは見えなくなってきている。以前に比べて穏やかになったように思う。霞たなびく優しい春の夜空の予感がする。
鶴丸との1部デュオ「静かの海(仮)」のサビのハモリは、テラコッタぽい色をした大倶利伽羅のミックスボイスと、鶴丸の歌のパールオレンジのきらきらがまるで互いにバフをかけるように立ち上っていって、絡まり合って、とても切ない歌なのに聞いてるこちらは多幸感がすごかった。
大倶利伽羅と鶴丸は得意声域はたぶん全く違うのだけど、悩むくらいきれいに混ざる時があるね。
1部終盤の兄(演:横山賀三)と弟(演:中村琉葦)のデュオ「おしえてください(仮)」で日向、浦島、鶴丸、大倶利伽羅でコーラスを重ねる部分があるけど、上手組(鶴丸、大倶利伽羅)のコーラスの一体感が目覚ましい
(※これは上手組が良いとか下手組が悪いとかっていう話ではなく、シンプルに混ざっててびっくりしたという事が言いたい)
2部1曲目「一度限りの命(仮)」も、鶴丸→大倶利伽羅でソロをリレーする部分もシームレスに歌がバトンタッチされるのですごく楽しい。
……かと思うと、2部の豊前とのデュオ「yellow Sac Spider」では実にオトコマエなボーカルでも魅せてくれるわけで。
CD音源だとサビ突入直前に「Spider...ha ha」っていうんですよ。大倶利伽羅が!なぜライブでは「ha ha」がないんです!?
ってくらい「ha ha」の口角上がってる感じの言い方がたまらなく良くて聞くたびニヤけます。CD音源では必聴じゃないですかね、ここ。
迫力満点の純黒のボーカルは、セクシーっていうよりは「精悍さ」と「艶」という言葉が似合う。ダンスもいい。音曲祭の感想でも書いたけど、しゃかりき感とか力みが抜けてきてると思う。
パライソ初演とパライソ2021ではコレオが変わってて、初演では腰振りがもっとセクシーだったそうなので、ぜひ見てみたい……!
「一度限りの命(仮)」のラストで第一形態のジャケットをバサッと肩に担ぐポーズ、完璧に決まってましたね。ほんまかっこいいので、あの瞬間はついつい伽羅ちゃんにフォーカス合わせてしまうんだよな。
2.鶴丸国永(演:岡宮来夢)
中の人は舞台裏で緊張しすぎて泣きそうな顔をしてたこともあった(※歌合バックステージ映像)けど、板の上で唄っている時の鶴さんは、誰よりも水を得た魚のように見える。
岡宮さんは、とにもかくにも声がいい。まるで歌の神様に愛されてるような……ってポエティな言葉で形容したくなるくらいに声がいい。聞くたびに思う。ほんと声がいい。
そんな彼の歌の印象は意外にもつかみどころがなくて
「なんかキラキラが眠っていそうな黒いもふもふ(葵咲本紀)」だったり「カワセミの羽の構造色(本人名義ソロ「Don't tell me lies」)だったりする。
パライソでは、そんな自分の感じ方が大転換を迎えたのでびっくりしている。
「合言葉はパライソ(仮)」が本当にやばかった……!!!!!
なんなんだよあれ。なんて華やかに歌うんだ。聞いてるこちらが重力を失ってしまうよ。パールオレンジとかコーラルピンクとかの色がきらきらきらきらして、夢みたいに綺麗。法悦とはこのことか?えっ?言い過ぎ???
なのに、続く「My name is 四郎(仮)」で畳みかけてくるあの声色。
シンプルにイケボ。凄まじい殺傷力。
「One! Step! Jump! ……Amen(ドヤ」じゃねーーーーーーぞ!!!
っかーーーーーー!!!
かっこよすぎて果てる!んだが!!!やばい!!!!!エィメン!!!
もはやジーザス=クライスト=スーパースター=鶴丸。太刀をマイクみたく扱う芝居(本体をマイクに見立てちゃうのは、歌合の蜻蛉切以来である)も堂に入りすぎてる。すごすぎ。
「♪(合言葉はパライソ)参ろうぜ (パライソ)安らかな国」
ってところなんて、一人で歌ってるのにファンファーレみたいでびっくりした。
(※「My name is 四郎(仮)」は刀ミュの1部では珍しい英詞が入っている曲だが、それについての考察は別記事に書く)
私は岡宮さんの鶴丸がラ行はだいたい「r」の巻き舌になるところがチャームポイントだと思ってたんだけど、2部終盤の「3万7千人の(仮)」ではラ行のニュアンスを細かく使い分けてるぽく感じてとても好き。
あの酔狂な死のワルツ、「♪幕府の奴らも黙らすような」の「r」が最もべらんめぇに聞こえるように持っていってるところにグッときている。
(※直後に憤慨する松井江に対して「トウケンダンシ ヤメルカイ?」って言うくだりがあるけれど、あの部分はちょこちょこ芝居感を変えているぽいので、公演を観るたびに全力で耳を澄ませてしまう)
岡宮さんの鶴さんの歌の旋律には常にふわもこした温かみを感じるんだけど、主に捧げる舞「白き波(仮)」では、その温度感がごそっと抜けてひんやりしていたのが印象的。
2部ソロ曲「In my Groove」のAメロもそう。セツナ系の曲に抜群に映えるセンシティブなボーカル。ライブだと空間丸ごと抱きしめるような力強さが目立つんだけど、CD音源だとより精密なボーカルコントロールが楽しめる。クールベージュの歌声に舞うダイヤモンドダストばりのきらきらが美しい。
いつか鶴丸のソロでラブソングを聞いてみたいと思う。焼け熔けるくらい情熱的な愛の歌も、心が落ち着いている時に聴かないと全部丸ごと持っていかれるような悲恋ソングも。どちらも。
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後編に続く。
後編では浦島、日向、豊前、松井について書きます。