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きょうの聡太くん 2025/2/13
きのう、置き薬のお兄さんが来た。今年はわりとコワモテの、ゴツい感じのお兄さんだった。
我が家の玄関には聡太くんの脱走防止に「猛ネコ注意」と貼り紙がしてある。置き薬のお兄さんはちゃんと風除室の戸を閉めてくれた。
玄関ピンポンを鳴らされて、足首に爪を立てられ「いててて……」となりながら聡太くんを振り切り玄関に出ていくと、置き薬のコワモテお兄さんがいたので、一旦戻って箱を持ってきた。
箱を持ってくるとコワモテお兄さんは、「猛ネコ注意って書いてあるすばって猫いるんだすか?」と聞いてきた。この貼り紙をいじってくれたのはコワモテお兄さんが初めてだ。
そうです、いまさっきも足首を噛まれまして……と答えると「うちサも猫いるんだすよ、噛むのと馴れ馴れしいのの2匹」と、あまり可愛がっていないと言いたげな、でも可愛いのがモロバレの返事をしてきた。
タブレットを操作して小型の感熱紙印刷機でブィーンと書類を印刷し、それにわたしがサインしながら「どうも噛んでもいい人だと思われてるフシがあるんですよね」と言うと「噛まれるったば序列を下にみられてらんでねすか」と言われて笑ってしまった。
コワモテお兄さんの失敗は「噛まれたらうちのばんそうこう使ってください」と言わなかったことではあるまいか。こういうところがなんというかシャイな秋田衆(訛りから察するに秋田衆だと思う)らしくていいと思う。津軽衆だったら絶対に「うちのばんそうこうを」と言うと思う。
なんというか「コワモテの男性が話す猫の話からしか摂取できない栄養」というものを感じた。
それはきっと「ホームセンターでコワモテの男性がキャットフードを買っているのを見たときにしか得られない栄養」に近い。なおこれは子猫用のキャットフードだと破壊力が増す。
これが「ギャップ萌え」なのであろうか。萌えという単語が古くなって久しいのだが。
我が家はテレビを置いているスペースの上に戸棚がある。戸棚には聡太くんが触ってはいけないもの、たとえば父氏の薬とかおつまみのせんべいとか大昔猫と暮らすなんて考えもしなかったころに母氏が買った精油とか、そういうものが入っている。
しかし最近聡太くんは「このしかくいののうえにとだながあるな……」ということに気づいて、父氏がおつまみのせんべいを出し入れするときなどにテレビ台の上にのっかって棚の中身を確認しようとする。
だから精油は処分したい(ハーブなどの精油は猫に毒である、最悪死ぬらしい)と思うのだが、言い出せないでいるし、現状聡太くんが伸びても届かない高さなので大丈夫だろうと考えている、という状態である。
棚のドアは聡太くんには開けられないであろう構造だし、たぶん大丈夫だと信じているのだが、父氏がおつまみを出すとき「わーい!」と見に行くので毎度ハラハラしているのだった。
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湯たんぽを新しくしたと何日か前に書いたと思う。
その湯たんぽに付属してきた袋が、なんというかフリース素材的なモコモコしたチャコールグレーのやつで、色合いがやや聡太くんに似ている。
これをそのへんに立てて置いておくと、「あれ? なんでここに聡太さんが?」となって、「あっ、湯たんぽの袋だったわ」となる。ちょっとしか似てないのに。
温かいという点ではちょっと近いかもしれない。聡太くんはつねにホカホカと温かいからだ。
グレーっぽくて温かいというところまで似ていれば充分同一人物ではなかろうか。湯たんぽは噛まないが。
聡太くんは母氏の布団に潜入すると、母氏がトイレに起きたりした場合枕の真ん中を強奪しにいくらしい。なぜそういうことをするのか。それでいいと思っているのか。このお猫様め……。
あんまり賢くないし猫としては鈍臭いと思うのだが、それでも人間に勝ち目はないのだった。