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きょうの聡太くん 2024/6/18
聡太くんはボールが大好きであると何度も書いた。布でできた音のしないボールをくわえてうーうーとサカリがついたように騒ぎまわることもよくあるが、やはり音のするボールのほうが好きなようだ。
ボールを見て集中する様子が、明らかに布のボールと違う。猫の聴覚はとてもするどいらしい。ちょっと猫用かつおぶしの入った引き出しを開けただけでも「かつおぶしですか!? かつおぶしですね!?」と寄ってくるのだから徹底している。
だから顔の前でボールをちりちり鳴らすと「ぼーるあそびですか!? ぼーるあそびですね!?」というリアクションをする。きのうの夜もそうだった。
ルーティーンとして物置に向かった聡太くんに、布のボールを見せて何度も放ってやったが見事に「ふーん」のリアクションで、もしや、と鈴の入ったボールを持ってきて顔の前でちりちりやると「ぼーるのじかんですか!? ぼーるのじかんですね!?」という反応をした。やはりボール遊びは楽しいらしい。ボールは友達である。
夏になって虫が出るようになり、古くて隙間だらけの我が家にもブンブンブンブン虫が入ってくる。
きのう聡太くんはテーブルの上に現れた虫に気づいてわたしの太ももを思いきりキックして飛んでいった。痛かった。そして虫を見失い、結局虫はわたしが始末した。
さてルーティーンをするかと物置の廊下に向かったら、聡太くんはまたしても虫を観察するのに夢中になっていた。「たおす! むしはぼくがたおす!」という決意に満ちあふれた顔をしていた。しかしそんなちっさい虫を、猫パンチで倒せるのだろうか。
今年もカミキリムシ相手に戦ったりするのだろうか。あれはまだホワホワの子猫のころだったからチキチキ威嚇されていて、今ならあっさり倒せるのではないだろうか。
そういう物騒な遊びはやめておくれよと思う。「ぼくはつよいんだぞ!」じゃないのだ。きみはお腹の弱い王子様なのだ。
それとも勝負師の名前をつけたばっかりに、虫とタイマンのステゴロをするようになってしまったのだろうか。
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ナイトルーティーンは薄暗い廊下から台所、茶の間、と走っていくコースが多い。
古い家なので廊下が長く、聡太くんは廊下をボールめがけてトットコ走っていくのだが、人間のほうがボールを見失うことがしょっちゅうある。次の日になって「なんでこんなところに?」となるのもザラである。
音の鳴るボールでもそうなのだから鳴らないボールだとぜんっぜん見つからない。面白いのは人間がボールを探していると聡太くんはその間大人しく待っていることだ。
おととしの今ごろは階段の上に登っていったのをボールで一階に誘導するのを毎晩のようにやっていて、そのたびにタローマンの劇伴のごとく「なんだこれはなんだこれは」と唱えながらやっていた。そしていっぺん一階に降りてもすぐ登ってきた。元気が有り余っていた、ということなのだろう。
そういえばさきほど、玄関チャイムを鳴らしてヤクルトの勧誘の人が来たのだが、聡太くんは「ふーん」のリアクションであった。玄関チャイムで飛び出さないとは成長したものだ。でも大人猫になって穏やかくんになってしまうのはなんとなく寂しい。たまたま眠かっただけかもしれない。
子猫時代の怒涛の生活をまたやりたいとは思わないが、懐かしく思い出されてなんだか切ないのだった。