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きょうの聡太くん 2024/11/11

 きのうの人間の朝ごはんはシーチキンの泳いだポテトサラダとゆで卵とトーストであった。
 聡太くんはシーチキンの缶が開くのを察知した瞬間、すごい勢いで台所に突進していった。どこまで食い意地が張っているのかと呆れる一方、人間の食べ物にいささかでも興味を示したのが愉快で、他方ではどれだけ耳がいいのか驚き、たいへん興味深かった。
 母氏がなめる程度シーチキンを分けてやると、「うまうま……うまうま……」と食べていた。おいしかったらしい。そのうえゆで卵の黄身まで要求し、固ゆでのところをほんのちょっとだけもらっていた。これもまた「うまうま……うまうま……」と食べていた。
 体には悪いかもしれない、でも人間の食べるおいしいものを食べさせたい気持ちは犬猫問わず動物を飼っているひとならだれでも持っているのではないだろうか、とわたしは思う。
 聡太くんが「これおいしいですねもぐもぐ」とやっているのを見るのは幸福である。ただお腹を壊されると困るのだが。

 きのう、ソファに座って将棋えねっちけー杯を観て、豊川先生のダジャレ解説にアハハハと笑うなどしていたら、聡太くんが足元にきた。
 お膝に乗りたいのかな、と深く腰掛けて膝をポンポンしたものの「それじゃないんですよ」という顔をされてしまった。じゃあもしかして、とソファに横になると「そうそうそれですよ」と乗っかってきた。
 可愛いのだがこれでは人間を意のままに操るヤベェ生き物である。人間は猫に従うほかないのである。猫は最強だ、人間を思ったとおり操っている。人類は猫に勝てない。
 父氏と熾烈な椅子の取り合いをしていることもよくある。父氏は聡太くんに対してたいへん弱腰なので「そうくん……」と情けない声を出して聡太くんに椅子を譲ってやることも多い。
 聡太くんは人間になにかを強く要求することができる性格なのだと思う。さすが生まれながらの飼い猫。徳川家光みたいなものだ。甘えん坊将軍である。わたしはさしずめ春日局といったところか。

人間が寝て毛布をかけた上に乗っている。


 聡太くんはどうも、お昼はあんまりお腹が空いていないらしい。キャットフードを用意しても興味をあんまり示さない。
 いっそ朝夕2回にすればいいのかな、とも思うが、一回のキャットフードの量が増えるということはそれだけ残すということだ。根本的解決にはならない気がする。
 たいていカリカリに興味がなくてもパウチのほうは喜んで食べるのだが、きのうの昼はパウチを無視した。でもソファに座っている目の前に持って行ったら「おもったよりおいしいですねもぐもぐ」と食べていた。最初からちゃんと食べてほしい。
 春日局としては、おいしくないのかなあ、ふりかけ的なものが欲しいのかなあ、とずっと考えているものの、聡太くんは「猫ちゃんのふりかけ」というしょっぱくないかつお節を「ぼくこれいらない」と拒否したひとなので、これまたきれいな即詰みに討ち取られている。なにかキャットフードにトッピングできる目新しくておいしいおやつはないものだろうか。

「そのしーちきんをひとくちください……」


 猫は気まぐれ、と世の人はみんな言う。
 でもその実猫というのはかなりガンコな生き物なのではないだろうか。少なくともわたしの知っている猫は、うちの猫もよその猫も、気まぐれな部分もあるもののけっこうガンコなやつらだ。
 ご飯の時間はいつも通りがいいし、キャットフードはいつものやつがいいし、遊ぶ時間も決めているし、寝床もいつものところがいい。自分の布団だと思えばずっとそこで寝ている。なかなかのガンコさだ。昭和のお父さんも真っ青である(わたしは平成生まれなので昭和のお父さんというのを見たことはないが)。
 気まぐれなところもあるけれど、ガンコにこだわるところもけっこうあると思うのだ。それもまた猫のかわいいところなのだとわたしは思う。

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