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私が未来に運びたい「モノ」
これが未来のためにできること、というのはおこがましい気がする。
僕は、郵便配達員だ。雨の日も暑い夏の日も変わらず街をバイクに乗って走り続けている。
僕の行動がちょっとした人助けや小さな小さな思い出になれば、自分が就いている職業に「なりたい」と思う子どもや「これからも使いたい」と思う人が増えると信じて続けている。
僕は都市部を担当しているので、おそらく街で1番多くの人に挨拶を交わし続けている。
たとえば、配達先の銀行に行ったら、警備員のおじさんとコンシェルジュのおばさん、窓口の担当者など、はたまた、マンションへ行ったら管理人のおじさんやすれ違う住民全員だ。
そんななかでも僕が楽しみにしているのが、保育園や幼稚園へ配達するときだ。
小さな小さな手を振りながら「ゆうびんやさんだー!」と喜んでくれる。
僕は幸せな気持ちになって手紙でいっぱいの手で、大きく手を振り返す。小さな子どもたちが羨望の眼差しを向けてくれる。それが僕の幸せだ。
また、小さなころの思い出は自分が職業を決めるときの大きな指針になる。
僕が郵便屋さんになろうと思ったのは、小さなころに直接郵便を手渡ししてくれた配達員さんがいたからだ。
人の想いを直接、渡してくれる・渡せる人になりたいと思った。
現在、日本は少子高齢化により、労働人口が減り続けている。また、インターネットの普及でアナログな媒体である郵便は年々、減少を続けている。
だからこそ、次世代の担い手となる小さな子どもたちに「郵便屋さんは人と人をつなぐいい仕事」「僕・私もこんな人になりたい!」と思ってもらえるように振る舞うのだ。
僕がこの心がけを「未来のためにできること」というのをおこがましい理由がある。
それは、街ゆく人や小さな子ども、自分が当たり前のようにしている仕事を幸せそうな笑顔で喜んでもらえることだ。
今のお客さん、未来のお客さん、未来の同僚が微笑みかけてくれるというお返しをいただける。
この幸せな連環の一部になれていることが私の幸せだ。小さな小さな手がいつか大きくなったとき、次の担い手となりたいと思ってくれる人が1人でも増えてほしい。
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