手書きの処方箋
何かを好きだという気持ちで息をして生きている時期があった。それは比喩ではなくて、実際そうだったと思っている。食べ物と同じように燃料であり、空気と同じようにいつでも吸って吐けるものだった。
その後、少しだけ何も好きになれない時期があった。かつて好きだったものに励まされたり、短くも楽しく、新しい何かに助けられたりしながら生きていた。
今また、緩やかに好きになっていっているものがあって(ただしわたしは飽き性なので要注意なのだ)、思う。好きは鎧なのだ。あるいは冬の外套といってもいい。
現実世界を戦うためのものではなく、余計なものが入り込まないようにしてくれるもの。
小さな雪のつぶてや、ぱちぱちする砂の風、冷たい雨粒、肌を刺す日の針をはじいて、君は君のままでいい、君の思う道をゆけばいい、大丈夫だよと温かく保ってくれる。
それは神様でもわたしそのものでもないけれど、信じさせてくれる。わたしはわたしのままで進んでいいのだと。