香水でも香道でも“崇拝”される香りとは
それはウード/沈香(※伽羅)と呼ばれる香料。耳にしたこと、もしくは香ったことがある方も多いと思う。仏前のお香で出会うこともある。
まず「ウード」という呼称は世界的な呼び名で、沈香そしてそれに内包される伽羅という最高級の”ウード”の呼称は香道文化で作られた言葉で、日本では産地によって呼称を変えている。
ウードは何か。花?木?石?
簡単に言えば木の傷口にできるもの。アガーウッドの木(ジンチョウゲ科アキラリア属)から得られる希少なエッセンスだ。アガーウッドの木は、主に東南アジアや南アジアの熱帯雨林地域に生息していて、この木が負傷したり感染したりすることで、数十年の年月をかけて”奇跡的に”そのエッセンスが出来上がる。
アガーウッドの木が負傷すると、その自然な防衛メカニズムとして、菌類や微生物の感染に対抗するために樹脂を生成する。この樹脂は、樹木の組織に浸透し、鉱物質を含むことで硬化する。この過程で、アガーウッドの木が独特の香りを放つようになるという。
アガーウッドからウードを抽出する方法は、古くから伝統的な技術として知られている。(ちなみに、森の中でウードを見つけ出す技術を持つ人たち昔から存在していて、彼らはウードハンターとよばれる)
一般的には、アガーウッドの心材や樹皮を粉砕し、水蒸気蒸留や水や油で浸漬することでウードのエッセンスを抽出する。この過程は繊細で時間がかかるうえ、そもそもウードを見つけること自体困難なため、ウードは非常に希少で高価な香料なのだ。
ウードの香りはどんな香り?
ウードの香りをなんと例えるか。香りの表現は幾通りもあるが、その独特な香りは深みのあるウッディなベースノートと、甘く華やかなフローラルやスパイスのトップノートが絶妙に調和したものといえる。その複雑な構造が世界中の心を惹きつける。といいつつ、初めて香った人はいい香り、という前にその強烈な印象に驚きを覚え、くさい、と言ってしまう人もいるだろう。
ウードの品質や香りの特性は、アガーウッドの木の種類、成熟度、抽出方法、および加工プロセスによって異なる。
香水とウード
多くの香水ブランドがウードの香りをテーマとした香水を手掛けており、甘い、スパイシー、ドライ、ウエット‥‥本当に、さまざまなテイストのウード香水を見つけることができる。それには当然天然・合成が入り混じっている、本物が使われている場合は残香性が強く、それは不思議と透明感と艶の印象的な肌香になるだろう。
ウードは人工的に作ることは不可能とされてきた(ウード栽培という意)。しかし、2022年にフレグランスブランドFUEGUIA 1833がこの偉業を成し遂げ、南米をはじめとするアジア以外でのウード生産に成功している。そのうえ、複数種のウードのフレグランスをリリースするという異次元の開発だ。ウードの乱獲を避け森林を守ることができるし、それぞれの香りを聞く、香道的な愉しみができるのだ。
香道における沈香についての話も奥深い。これについてまた改めて記事にしたいと思う。
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