IMGP9568のコピー

地デジ波の観測

受信回路トポロジとして2段スーパーヘテロダインを用いて地デジ波各チャンネルのパイロット信号のレベルを測定します。

色々試した結果、回路構成はこのようになりました。

初段IFフィルタとして中心周波数400MHz通過帯域幅250kHzのSAWフィルタB39401B3742H110を使用します。
そのままではサイズが小さく扱い難いので、SMA端子で引き出します。

2段目IFフィルタは3.579545MHzの水晶振動子6素子で構成したラダー型クリスタルフィルタを使用します。

こちらは水晶振動子の端子間容量が思っていたよりも小さかったようで、かなりの狭帯域となりました。実測値しとて中心周波数3.57933MHz通過帯域幅約100Hzです。ロスが約20dBと大きくギリギリ実用範囲ですが、非常にシャープで切れ味の良いフィルタとなりました。スペアナが無いので広帯域受信機で測定しました。

1段目ミキサーのADL5801、2段目ミキサーのAD831、1段目および2段目局部発振器のADF4350、2段目IFフィルタプリアンプのAD603、ログアンプのAD8310は、Amazonで入手した基板型モジュールです。

これらで構成された受信部を制御および測定データを処理するためのマイコンボードを製作します。マイコンは水力発電用インバータを製作した時の余りのRX62Tを使います。周辺部品もいつのものだか分からない有り合わせをかき集めて作りました。

例によって回路図エディタでパターンを引きます。

実際に回路を組んで軽くソフトウェアを書いて試運転してみます。

局発用PLLシンセサイザのクロックソースの水晶振動子の温度ドリフトが予想よりも大きく、軽く息を吹きかけただけで周波数が大きく変わってしまいます。電源投入後温度ドリフトが安定するまで10分ほどかかり、部屋の気温によってもチューニングが大幅にずれてしまいます。

そこで、2段目IF周波数をソフトウェア的に3.57933MHzから-275Hz~+1200Hzの範囲を25Hz刻みでスキャンすることで温度ドリフトの影響を吸収するように工夫しました。ハードウェア的にわざわざ高価なTCXOやOCXOなどに載せ替えずとも済みます。
スキャンした帯域の中で通過帯域幅約100HzのIFフィルタを通した信号強度が最も高くなった所がパイロット信号である可能性が高いので、その値をパイロット信号レベル測定値とします。

PLLは周波数を設定してから位相同期するまである程度の時間を要し、それまでの期間は周波数が不安定になります。そのためスキャンする用途ではDDSを用いるべきですが、高速DDSは高価なので敢えてPLLを採用しました。天気は瞬時に変化するものでもないので、1ステップに1/3秒の時間をかけ、-275Hz~+1200Hzの範囲で全60ステップのスキャンを行います。すなわち1チャンネルの測定に20秒かかります。これを15チャンネル分測定を行うので、測定サイクルは5分となります。

また、雷や誘導性負荷の解放などによりパルス状のノイズが信号に乗って測定値の信頼度を悪化させる可能性があるので、1ステップ中に64サンプルA/D変換を行い、その標準偏差σを求め、±2σ以内のサンプルの平均値を測定値とします。これにより突発的なパルス状のノイズの影響を受けにくくしています。

試しに冬支度までの短い期間ですが、約12日間の連続測定を行いました。
県内波の13ch,16ch,28ch,30ch,32ch、および隣県波の21ch,29ch,35ch,48ch,50ch、ならびに所在不明の中継波の14ch,18ch,22ch,23ch,25chの計15チャンネルを測定しました。各地デジチャンネルのパイロット信号レベルを[dBµ]で示します。定期的にグラフの波形がノッチしていることは深夜の停波時間帯です。

ざっと見た感じですと、風向きの関係上主に隣県波を参考にすることで天気予報ができそうです。一部アンテナに着雪したり強風でアンテナが揺れる期間があり、測定値はその影響を受けているようです。県内波は大地反射の影響も受けているようで、地面が湿っているか乾いているかで受信レベルに変化があるように見受けられます。

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