AND発想
この数年で、パーパスブランディングって
よく耳にするようになりました。
その内容は、ほんと乱暴に言えば
「企業も存在価値を明確にして、
働く人たちとも共通の目的をシェアしながら
社会のためになることをしていきましょうよ。」
ってことですね。
このパーパスブランディングに関して
経営学者の野中郁次郎さんの「共感経営」という
本の冒頭に面白い話が載っていました。
最近、このパーパスの大事さを掲げたのが、
アメリカの財界ロビー団体「ビジネスラウンドテーブル」。
アップルやウォルマートなどの
米国のトップ企業が所属する財界ロビー団体です。
彼らがパーパス宣言をした会議の約1ヶ月前に
イギリス・エジンバラのアダム・スミスの旧邸で
新主義の再構築というテーマで会議が行われていたそうなんです。
経済の新主義議論は、イギリスにまで戻るのか・・・
秘密結社っぽくて、ちょっと怖い。w
さて、それはさておき、
一般的にはあまり有名ではないのですが
アダム・スミスは生涯で二冊の本を世に出しました。(意外と少ない!)
一つは経済を語った有名な「国富論」。
しかし、その17年前に人間観や社会観を語った
「道徳感情論」という著書を実は最初に出していたそうなんです。
で、この本で語られていたのが、「他者に対する共感」。
アダム・スミスの理論を、順番を追いながらストーリーにすると
「他社に対する共感」を元に社会の規律が導かれ、
「見えざる手」により、より良い社会が形成され、
その上で自由競争が成り立ち、社会の利益が促進される。
というふうになる。
つまり、今問題になっているのは、
近代資本主義がアダム・スミスが思想の起点にした
最初の一行「他社に対する共感」を
置き去りにしてしまっているということ。
だから、それを取り戻そうよ!というのが、
昨今のパーパス文脈なんだそうです。
この話を聞いたときに
真っ先に渋沢栄一さんの「論語と算盤」が浮かびました。
彼の有名な著書である「論語と算盤」で
最も大事なところは
「論語」でも、「算盤」でもなく
間にある「と」の部分。英語でいう「&」です。
どちらか片方ではなく、両方を実現するこれが大事である。
これが渋沢さんが本当に伝えたいメッセージだったそうです。
同じようことを
「ビジョナリーカンパニー」の著者である
ジェームズ・C・コリンズさんも言ってますね。
コリンズさん曰く、経営で必要なのは、
何か一つを選ぶOR発想ではなく
極端な二つ実現させるAND発想だそうです。
論語と算盤という経済に対する考え方が、
渋沢栄一が生まれる約100年前に存在していたとは・・・。
古今東西、こういう思想の共通点は、面白いですね。
ちょっと東洋思想に戻るのも、面白い。
AND発想っていいですよね。
サードアンサーみたいな新しい解も見つかりそう。
みんなで、もっといろんなものを、混ぜこぜにしていきましょう!w
【参考文献】
ジェームズ・C・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー」日経BP出版センター