山の話 5 エベレスト女性登山隊
ここで、わが会の女性会員の話をします。
4人の女性たちは、日本女性として初めてエベレスト登頂を果たしたTさんの隊に参加した、わが会の誇るメンバーです。
多くの方がご存知の、あの歴史的な登頂隊の一員だったのです。
冬山の経験が豊富で、若く、バイタリティに溢れる彼女たちは、普段は優しい笑顔を見せる穏やかな女性たちです。
しかし、山に立つと豹変し、強い意志と技術を発揮します。
女性隊リーダーのWさんは、仕事と子育ての合間を縫って、過酷な登山に挑戦する女性だ。
Tさんにエベレストの頂上アタックを譲られた人でもあります。
悪天候による遅延で食料や燃料の消費が激しくなり、酸素ボンベも想定以上に消耗してしまったからです。
最終キャンプで、残されたのはわずか2本の酸素ボンベ。
シェルパの経験と若さを考慮し、チーム全体の成功を願って、Wさんは惜しみなく頂上アタックの機会を譲りました。
今回の冬合宿では、来年挑戦するエベレスト登山の最終調整として、日本屈指の厳冬期登山ルート、剣岳でのテント泊を目標としていました。
同時に、八ッ峰隊との連絡をサポートするという重要な任務も担っています。
早月尾根は、腰から背丈ほどの深雪の中をラッセルし、日本海からの季節風が吹き荒れる、まさに極限の場所。想像を絶する過酷な環境で、彼女たちは自分たちの限界に挑戦しようとしています。
サポート隊のリーダーたちがベースに戻ってきたことで、昨日までの静けさは一変、ベースキャンプは活気に満ち溢れた。
サポート隊に加わった新人メンバーに、頂上までの様子を詳しく聞かせてもらううちに、私もいつの日かあの頂上に立ちたいという気持ちが募っていった。
一種の興奮と、同時に、経験と技術を磨かねばという焦燥感が、私の心を掻き立てた。
極寒の夜、雪洞は温かな隠れ家
雪洞は、私たちの努力によって大幅に拡張され、20人以上がゆったりと過ごせる広々とした空間に生まれ変わった。
内部は、外の吹雪の音も人の声も雪に吸収され、まるで宇宙空間にいるような無音の世界。
ローソクの灯りを頼りに、ドーム状の天井に反射する柔らかな光が、静寂な空間に幻想的な輝きを添えていた。
雪洞内の温度は、外気がマイナス20度を下回る極寒の外とは対照的に、雪洞内はまるで温室のように暖かかった。厚く積もった雪が、私たちを寒さから守ってくれていた。
新年会
元旦ということもあり、近隣の隊を招いて、ささやかな新年会を開くことにした。
約20人が集まり、雪洞は熱気に包まれた。
新年会では、他の会のアイガー北壁登頂経験を持つNさんが参加されていた。
長身で精悍な顔立ちの人で、そのオーラがひときわ輝いており、山岳会の先輩たちと山の話題で盛り上がっていた。
また、私たちの会の新人女性メンバーが披露した歌声は、澄み切った冬の夜空に美しく響き渡り、一同を魅了した。
ベースでは、年越しそばをすすりながら賑やかに新年を迎えた。
自然の厳しさ、そして人間の強さ
そのころ、女性隊は、頂上付近で猛吹雪に襲われていた。
テントは雪に埋もれ、やむを得ず他の会の雪洞に身を寄せざるを得なかったという。
一方、八ッ峰隊もまた、深いラッセルと戦いながら、元旦に八ッ峰の取りつきの尾根に辿り着いた。
両隊の無事を心から願いながら、自分たちの安穏とした時間を申し訳なく思わざるを得ない。