見出し画像

山の話 4 八ッ峰隊

翌朝も、相変わらずの吹雪がベースキャンプを包んでいた。リーダーの話によると、冬山は10日に1日晴れるかどうかの厳しい環境だと言う。

天気図を見れば、冬型の気圧配置がはっきりと表れており、その言葉の重みを改めて感じた。

元旦の朝、私達新人3人は食当を務め、早朝から調理の準備に取り掛かった。

昨日集めておいた雪を溶かし、ラーメンを作る。少しの野菜とお餅を加えて、お雑煮風にアレンジした。

その頃、無線からアタック隊の元気な声が聞こえてきた。

今日、いよいよ山頂を目指すという。女性隊は、頂上で幕営訓練を行い、八ッ峰隊との連絡をサポートするとのことだ。

剣岳の早月とは反対側の東面にある八ッ峰。厳冬期、未だ登攀記録のないその峰は、我々山岳会の悲願であり、今回の遠征の最大の目標だ。

八ッ峰隊は、扇沢から黒四ダムを経由し、内蔵助平を横断、はしご段乗越から八峰に取りつく予定とのこと。

深雪のラッセルが予想される厳しいルートだ。

午後に、女性隊をサポートしたメンバーたちがベースキャンプに戻ってきた。髪の毛や眉毛まで凍りつき、まるで雪だるまのようだった。

彼らの姿は、剣岳上部の風雪の厳しさを物語っていた。


今日1日、新人の私たちは、雪洞の補修と雪上訓練に明け暮れた。

冬山の経験が少ない私にとって、訓練はまさに試練だった。

アイゼン歩行やピッケルの扱い方など、基礎から丁寧に教わる一方で、ベテランの先輩たちの厳しさも肌で感じた。

訓練で少し上部まで登行した際、吹き付ける雪と身に凍み込む寒さに、思わず身がすくむ思いがした。


いいなと思ったら応援しよう!