『連載 椅子のない部屋』vol.7 終わり
ひょんなことから彼氏でもなんでもない人と一緒に住むことになった。
1週間くらいの期間限定。今日決まったことなのに、何故こうなったかは思い出せない。
ワタナベくんとの生活が土曜日に終わった。
正確にいうと、10月26日の夕方16:09にお別れをした。彼の最寄駅を出たのがその時間。
朝、歯医者に向かった彼を待って、
スーパーに買い物に出かけ、お昼は親子丼を作った。
「たまねぎ、1個でいいよ」というワタナベくんのアドバイスを無視して、2つ買ったら、たまねぎだらけになった。
いつもと変わりなく、ご飯を作って食べる。
ご飯の後は買い溜めてたアイスを2人で食べた。
ぼんやりとテレビを見ながら時間を過ごした。
この1週間、やさしい気持ちで穏やかに生活できた自分がいた。
忙しいと錯覚して、自分しか労ることの出来なかった私が他人と暮らして、温かな気持ちを知った。
午後の日差しの中、ぼんやりテレビを見るワタナベくんが神々しく見えた。
御法度とは分かりながら、彼のほっぺにキスをした。
彼が愛しく見えたから。
ちょうどよかったのだが、彼のほっぺは歯医者の麻酔で感覚がなかったみたいだ。笑
かくして、不思議な同棲生活は終わった。
私はその後、髪を切りに行った。
私より背の高いワタナベくんが、肘をついていた頭のくしゃくしゃの髪の毛は、今はさっぱりとしている。
毎月私を担当する美容師さんに、
(ショートカットなので月1美容院に行く 笑)
「大人っぽくなったね、何かあった?」と言われたが、
「何も無いですよ。」と元気に答えておいた。
かなも。