39. 春明力『HSPサラリーマン』
HSPとは、Highly Sensitive Personの略。生まれつき敏感で、まわりからの刺激を過度に受けやすい繊細な人を指す、らしい。
1990年代の後半からPCを触りはじめた世代からすると、Hot Soup Processorがすぐに浮かぶ。野田クリスタル氏の野田ゲーで再び脚光を浴びた、あのプログラミング言語だ。
それはさておき、ぼく自身がHSP気質という自覚があるため、タイトルに惹かれて手にとったのが本書だった。
人づきあいが苦手で、営業成績も下から数えるのが早いという営業マンの主人公が、同じく不器用に見えながらもダントツの営業成績を誇る先輩に出会い、営業に対する姿勢、仕事に対する姿勢、ひいては人生に対する姿勢を学んでいくというストーリーだ。
物語と解説を交互に展開させていくタイプかと思いきや、最後まで物語調を貫く、いわば、自己啓発小説といったところか。著者の経歴を見るかぎりでは、著者の自伝的な色が強いのだろう。
作中にHSPということばは一度も出てこない。うがった見方をすれば、出版社や編集者が本を売るために選んだキーワードがHSPだっただけなのかもしれない。
それでも、ほっこりとした読後感を得られる、休日のゆったり流れる時間にしっくりくる読書体験だった。