見出し画像

第5回 國學院大學學長杯争奪全国学生弁論大会の感想

2024年6月1日(土)、國學院大學學長杯争奪全国学生弁論大会に伺いました。
前回のnoteに引き続き、感想を記します。

今年度はこの調子で、参加した全ての大会でnoteを書くことを目指したいと思います。


午前

第1弁士「暗き底より赤城を望む」(明治大学)

個人的に問題意識には大変共感する弁論でした。
一方で、その問題意識と政策の ①大きさが一致していない ②逆方向を向いている という疑問が生じました。

①については、「東京一極集中」という大きな問題に対して、「新幹線による労働者の輸送」促進という小さな政策でした。
質疑で指摘しましたが、新幹線を使って毎日往復できる乗客数はせいぜい数万人で、「東京一極集中」に対しては焼け石に水でしょう。

②については、「東京→地方」という方向の問題意識によって、新幹線で「地方→東京」という方向への移動を促しているという点です。
問題意識が共感できるものであればあるほど、政策の説得力が下がってしまうという事態に陥ってしまっていました。

東京という「ブラックホール」に地方の人口が吸い取られているという指摘がありました。
政治学・経済学に「ストロー効果」という言葉があります。
交通網の整備によりアクセスが良くなると、経済活動はストローのように都市に吸い取られ、地方は衰退してしまうというものです。(近年では情報通信技術の発達によっても同様の効果が見られるという研究もあるようです。)
これに基けば、「新幹線の利用促進」という政策はストロー効果が発生するまさに典型であり、弁士の政策はむしろ東京一極集中を促進するだろうという推定になるのです。

唯一の同期でした。お疲れ様でした。


第2弁士「ユアー・マイ・オンリー・シャイニン・タックス」(早稲田大学)

(優勝)

税制弁論は難しい!

2年前の弁論で所得税を扱ったときに感じましたが、政策の提示によって1か所をいじると、他の税制との整合性が崩れやすいというのが税制弁論の難しさです。
また、大多数の政策弁論が「税をこう使うべし」という提案である(あらゆる政策には予算措置が必要)一方で、「税をこう取るべし」という提案になるため、政策としての位置付けも違ったものになります。

「問題→政策」ではなく「理念→政策」という弁論なので、理念の説得が焦点になる構成でした。
若干荒削りな部分はありましたが、なかなか良い弁論だったと思います。


第3弁士「見える化」(法政大学)

テーマの筋は悪くないと思うのですが、有効な分析がなされていなかったように思います。

ロビイストの登録制というのは正直よくある論点ですが、最低限それに沿いつつ、新たな視点を得たかったです。
各主張の根拠、弁士の言う「悪いロビイング」とは一体なんなのかなど、疑問が多く残ってしまいました。


第4弁士「花かがり」(東京農業大学)

(審査員特別賞)

議論の内容が理解できませんでした。

特徴的な語り口や文語表現は、弁士の個性を示すことはできても、聴衆の説得を促すかどうかは別です。
また、「具体例」と「比喩」は異なります。

意識を聴衆に向けて、語り口や文語を一般的なものに戻した上で、何を伝えたいか整理すると良い弁論になると思います。


第5弁士「民主主義の自衛隊」(防衛大学校)

(準優勝)

いつも「本弁論は防衛省の公式見解ではなく、あくまで個人の見解である」と前置きするのが良いですね。笑

論点の絞り込みと現状分析の整理が必要だと感じました。

論点については、「広報」という言葉の広さに起因するものです。
認知戦の重要性は理解できるものの、それを地方協力本部が行うという前提は誤りではないでしょうか。
地方協力本部の隊員に対して広報の方法論が指導されていないという話と、認知戦への対応は別の話で、情報本部が担うべき任務であるはずです。


昼休み

写真を撮り忘れました。
國學院、やっぱり安くて美味いです。


午後

第6弁士「尊厳と覚悟」(学習院大学)

大会前にご飯に行った時に内容をうかがっていました。
初見ではないので、主張を理解した上で弁論を聴くことができ、なかなか良い弁論だったと感じました。

一方で、弁論中に弁士の主張・立場が明確には提示されていなかったように思います(自分はこれを事前に聞いていたので理解できましたが)。
妥当性が欠けた分析があったわけではないので、弁士の主張との結びつきをたずねる質疑が多くなったのではないでしょうか。


第7弁士「Easy research!」(芝浦工業大学)

弁士の立場が分かりませんでした。

「大学生が大学院に進学する理由は就活のためである」という現状分析と「大学院生は学部1年から就活に専念をする必要がある」という現状分析が共存していましたが、それならば大学院生の望む状況になっており、問題はないはずです。

では政府の立場から「大学院に進学するのは研究のためだ」とするならば分かるのですが、その立場が弁論中に明確に示されておらず、主張がよく分からないままに議論が進んでしまっていました。

また解決策について、修士課程を3年間にするというのは、聴衆としては直感的に受け入れづらいものでした。
(標準修業年限が1年伸びるとして、単位数はどうするのでしょうか)


第8弁士「私の将来の夢は」(慶應義塾大学)

聴衆から笑いが漏れる状況が生じていました。
この状況が生まれるかどうかは、少なくともこの弁論においては弁士の技量次第であり、聴衆の側に問題があるとは感じませんでした。

笑いが生まれた(と同時に説得されていない)原因は解決策の突飛さであり、さらにその原因は論理飛躍であると考えています。

弁論前半では、少子化とその原因についての分析が試みられていました。
この分析においては、根拠づけに乏しいこと、分析が広いこと、という2つの問題点がありました。
いずれも、婚姻数が増えない原因の特定に至っていませんでした。

このように分析が未完成である状態で提示された解決策は、意外性が強すぎるものでした。
むしろ弁士が弁論中に「マッチングアプリ」を批判したことで、LINEという国民の多くが使っているSNSに導入するという解決策は弁士の批判対象になるはずなのにそれを主張するというギャップが生じていました。

全体として、「課題特定」という基本の論理構造を辿ると良いと思います。


第9弁士「上槽」(國學院大学)

(第3席)

どの「インターン」の話をしているか分かりませんでした。
また、就職活動におけるインターンシップについて弁士は知らない
のではないかと思ってしまいました。

仮にインターンAとインターンBに分けてみます。

インターンA:選考の一過程としてのインターン。優秀者は次の選考に進むことができる。内容は模擬ワークなどで、企業の生産活動には一切の関わりがない。1日〜1週間ほど。
インターンB:長期にわたって企業(や議員事務所)の一構成員として参画するもの。しばしば「ガクチカ」を目的とされる。

インターンAとインターンBは同じ「インターン」という名称であるものの、全く違うものであり、まとめて議論することは不可能だと思います。


さいごに

ご意見、ご感想、ご批判などをお待ちしています。
聞き取りきれず誤認している部分や、不本意な解釈があるかもしれません。
著者に直接ご連絡くださいませ。

いいなと思ったら応援しよう!