ショートショート『オプション』
あるところに案内所があった。
前世と来世を繋ぐその案内所には、
豊かな生活を求めて多くの生き物が集まっていた。
そこへ人間の男として産まれる予定の者がやってきた。
「ここはなんだ?」
「転生案内所です。来世での生活がより良いものになるよう、事前にオプションを追加しておくことができるのです」
「そんなもの、初めてきいたぞ」
「お客様がキツネとして生活を楽しまれている間に設立されました」
「ふん、特に楽しくもなかったけどな。どんなオプションがあるんだ?」
「お客様の場合ですと、来世は人間の男性として生まれることしか決まっておりません。ですのでまずは産まれる家庭の環境からでしょうか」
「そんなことが決められるのか?」
「もちろん、それなりの代償はありますが……」
「これはすごい。大富豪の家に産まれるようにしてくれ!」
「わかりました」
「それに加えて顔は整っているようにしてくれ、賢い人間であることも重要だ」
「お客様、あまりにオプションを追加しすぎるのは……」
「次はいつ人間になれるかわからないんだ。思いっきり楽しんでやるぞ!」
その後も男はできる限りのオプションを追加した。
大富豪の家に産まれて、美男美女の両親に愛されて育つ。
街でスカウトされてモデルをしながら、東京大学を首席で卒業する。
医者として働きながら、多くの女と遊んだ後に、最高の相手と出会って結婚する。
そして自分に似て優れた子供が産まれる。
これが彼の選んだ人生の追加オプションだった。
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