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ショートショート『青芯』

学生の頃からずっと使っている3色ボールペン
たしか先輩にもらったものだった。
特別思い入れはないんだけど、
まあ定番の型だし、替え芯だったどこでも買える。
もう長いこと使っていた。

でも使っているのは黒色と赤色だけ。
青色なんて一度も使った記憶もない。

文字を書くのは基本的に黒色を使うし
資料などの重要な部分には赤色で線を引く。
だけど青色は、あんまり使い道がないじゃない。

黒、黒、黒、赤、黒、黒、赤、黒……
青が登場するタイミングは一度もなかった。


ある日のこと
いつも通りに何気なく黒芯をノックして書き始めてみたが
どういうわけか、黒色では写らなかった。
よくよく見るとそれは、青色だった。
おかしい。
どう見ても、黒色をノックしている。
というか、黒以外は側面についているから、ノック式でもないし。

どういう仕組みになっているのか、確認をしようと
外側を外してみるけれど。
何度やっても外したときには、芯が元に戻ってしまう。

まあ、仕方ないか。
今書いているのは、決して公的なものでもないし。
青色が使いたくないわけでもなかったから。


それから数日の間、私は青色ばかりで書き続けた。
電話対応のメモも、資格の勉強中も。
幸いなことに赤色の芯は普通に使えたので、赤色で丸つけをした。


うとうとしながら勉強していた夜だったと思う。
私が青色で日記を書いている途中に、眠ってしまっていた。

はっと目が覚めたときにもボールペンを握ったまま。
しまった、どこまで書いてたんだっけ? と日記を見返すと
文脈とは全く関係のない
「いい思い出になりました。ありがとうございました」と掠れた文字。
寝ぼけてたのかな、こんなこと書くなんて。
と続きを書こうとするが、青色はインクが出なくなっている。

もしかして、長いこと使われなかった青芯が
私の元から離れる前に、お別れを伝えてくれたのかな。

いつのまにか黒芯も、出るようになっていたけど。
ボールペンの頭をノックするたびに、すこしだけ気持ちがブルーになる。




昨日に引き続き青色をテーマにして書きました。
10,20くらい書き溜めたら本する予定です。


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ぜひ読んでみてください。

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