ショートショート『空飛ぶクリームソーダ』(喫茶のふしぎ)
わずかに小雨が降る午後だった。
私は友人に教えられた喫茶店に向かっていた。
なにやら他では見られないような変わった光景がお目にかかれるらしい。
それが何なのかは教えてくれなかったし、その友人も結構な変わり者で、どこまで期待して良いのか迷いどころではあったが。
元々予定もない休日だ。
コーヒーでも飲みながら、のんびりできるだけでも十分だろう。
店の近くまでやってきた。
透明なビニール傘越しに外観を眺めてみるが、不思議なところはなかった。
だが、よく耳を澄ますと中から大きな歓声が聞こえる。
とりあえず入ってみようかと扉を開けた瞬間、キラリと光る何かが目の前を通り過ぎて、思わず後退りする。
「驚かせてしまってすみません。空いてる席へどうぞ」
入り口近くの白いシャツの男性に案内された。
店内は半分ほど席が埋まっていたが、なぜかほとんどの客が立ち上がっている。中には拍手をする者も。
そして視線の先にあるのはクリームソーダ……のグラスに羽根が生えたもの。なんだあれは?
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