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言わない事で伝わる事

僕は中学生の頃不登校で悩んでいた。
自分の言葉の少なさに絶望していた。他者の冷たさに失望していた。誰も僕の気持ちをわかってくれない。僕をわかってくれない人となんか関わらない。
当時の僕はこのような明確な考えは持っていなかったが、心のどこかでそう思っていた。
自分の伝える力がないことを無視し、他者にばかり求めていた。

でも、高校生になり関わり人の数が増えた時僕は気づいた。
「言葉がなければ置いていかれる」と。
面白い事を言える言葉。共感できる言葉。自分に嘘をつく言葉。他人を傷つける言葉。
良くも悪くも、僕は沢山の言葉を使おうと努力していた。
そんなある時、僕はとある先輩にこんな事を言われた。
「お前はほんと余計なことしか言わないな!笑」
冗談混じりだったので、僕も軽く受け流していたが心のどこかにその言葉が引っかかっていた。

そのまま僕は、「よく喋る奴」という印象を持たれたまま生きてきた。
生活をする中で、幾度となく「余計なことまで言う」と言われてきたが、もはやその言葉にも慣れてしまっていた。
そなん時あるショート動画が流れてきた。
10-FEETというアーティストのライブMC映像だった。

いいか。ぜーんぶ言いたくなる時ある。
気持ちをわかってあげたい時も。なんか力になってあげたい時も。何かを伝えたい時も。文句を言いたい時も。怒りたい時も。全部言いたくなる時があります。
でも、きっと全部言ってしまうと逆に伝わらへん時があります。
そこでグッと我慢できる。伝えるために全部を言わず、グッと我慢して必要最低限を伝えられる、いい男やいい女になりたいなぁ。
でも、なかなかなれへんな。そんな思いを歌にしました。
ばあちゃんはそれが、上手やったな。

10-FEET TAKUMA 京都大作戦ライブより

僕はこの言葉に衝撃を受けた。
伝えるために、伝えない。自分のうちに秘めている言葉を全て出すのではなく、必要最低限を伝える。
もちろん普段から、仕事の種類や、伝達事項などは必要最低限の情報にしていたが、日常会話ではできていなかった。書面ではなく、言葉で伝える時。自分の気持ちを言葉にする時。
いつも、本当に伝わっているのか不安だった。自分の言葉を相手は理解できただろうか。あのリアクションはきっと理解しているだろう。そう思い込み、再度自分の期待と違う事が起こると落ち込む。そんなことを続けていた。

でも僕が本当に考えるべき事は、僕自身が相手にしっかりと伝えるための言葉で話ができていたのかだ。
言葉のやりとりは片道ではなく、往復でないと意味がない。
相手にわかって欲しい一心でつい言葉を多くしてしまう。だが、相手側に立って考えると、本当に必要な情報は何なのかを見極めることに、エネルギーを使ってしまう。
それは、何かを伝えたことにはなっていなのではないか。

もちろん、自分の気持ちを抑え込みすぎるのは違う。
自分の本当に伝えたいことを伝えるために、言葉を気持ちをグッと我慢する。
そんな伝え方を僕はしてみたい。

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