軍事戦略を学んで一騎当千になろう!(『孫子』編 その3~底本について~)


はじめに

『孫子』には、実は底本が4種類あります。
出版されている『孫子』の本は、いずれかの底本を軸に執筆されています。

ここでは、『孫子』の底本について解説をします。

『孫子』自体にも分類がある

『孫子』は、古代の本なので発掘されなければ、そもそも存在自体すら分かりません。
発見されたとしても、写本であれば写し間違いや加筆そして錯簡が起こっている可能性があります。
そのため、数種類の底本が存在してもおかしくはありません。

『孫子』の底本については、初版や改訂版のような感覚で接するのがいいでしょう。

できれば、すべての底本を扱った書籍を読んでおき、その差を確認しておきたいところです。

現在の『孫子』は、以下の4種類の底本に分類できます。
底本によって、『孫子』の内容が大きく変わるわけではなく、少しの相違があるぐらいです。

1.宋本十一家注 孫子

もっとも採用されている底本。
意識せずに買うと、99%がこれを底本としています。

この底本を採用している本

『孫子』 金谷治 著 岩波文庫

2.竹簡本 孫子

発見が「1」よりも後発のためか、底本の採用率は低めです。
筆者は、主にこの底本の『孫子』で学んでいます。

この底本を採用している本

『孫子』 浅野裕一 著 講談社学術文庫

3.魏武注 孫子

三國志で有名な曹操が『孫子』に注釈を入れたもの。
書名に「魏武注」と入っています。
中身は、「1」とほぼ同じです。

この底本を採用している本

『魏武注孫子』 渡邉 義浩 著 講談社学術文庫

4.原孫子

『孫子』が最初に書かれた内容と想定されるように、著者が編纂したもの。
よほどのことがない限り探さなくても大丈夫です。
『孫子』を学ぶ際に参考にする程度にとどめておくのがいいでしょう。
厳密にいうと、この底本を採用している本はありません。
解説に、「原孫子」として書かれているものが参照可能な程度です。

原孫子を載せている本

『孫子・呉子』 天野鎮雄 著 明治書院

上から順番に、底本に採用されています。

底本の違いがあると書きましたが、何から読めばいいのでしょうか?
最初に読む『孫子』は、どの底本でもいいと思います。
更に書くと、「1」しかほとんどありません。
「1」以外の『孫子』を読みたくなったら、上記で紹介した書籍に手を伸ばしてください。

中身の違いを吟味するのは、何冊か『孫子』を読んだ後でも遅くありません。
まずは、『孫子』に触れることを優先してください。

底本で違いがあるのか?

一番大きな相違点は、「攻める方」に兵が余るのか「守る方」に兵が余るのか、という点でしょうか。

竹簡本は、「守る方」が兵が余るとなっています。
宋本十一家注の方は、「攻める方」が兵が余ると書かれています。

この違いは、別の記事で詳しく書きます。
「2」で紹介した書籍の「形篇」P59に解説が載っているので、気になる方は読んでみてください。

簡単に解説すると、「防御」の優位性をどこまで理解していたかによります。

現在では、攻撃側は防御側の3倍の兵力が必要と言われています。
ざっくりと書くと、防御側は地形の利点を存分に活かせますし、地理に明るく待ち受けられるなどが挙げられます。

話が少しそれましたが、底本で違いはありますが、なかなか気づかない程度だと思ってください。

おわりに

もし、『孫子』の本を何冊か読んでみて、何か書いてあることが違うと感じた時は、底本を確認してください。
底本が違う場合は、読まれた本の内容が微妙に違うのは当然です。

手元にある『孫子』を読む前に、底本を調べてみてください。
底本を意識して、『孫子』の本を何冊か読むと、新しい発見があるかもしれません。

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