月刊そうすけvol.15
ー物の心を助けるーを社訓とする「古家具古道具そうすけ」その名の通り店内には、愛情を持って丁寧に補修された古家具や古道具たちが並びます。心を込めて、前の持ち主から新しい持ち主へのバトンタッチの役目を果たしたい。一生付き合える古家具古道具との出会いがあることを願って…。
「古家具古道具そうすけ」で起こるあれこれを月一でお届けします。
秋の入口を感じ始めた今日この頃、この季節にはオークやウォールナットの色がよく似合う、そう、古家具がしっくりと馴染むような心持ちがしますね。
今回は久々のスタッフインタビューです。
クルクルと動く好奇心の塊みたいなチャーミングな瞳が印象的なこの道35年の修理職人、原賢一さんが登場です。
ー丸太のカヌーに魅かれた小学2年生ー
原さんが初めてノミを手にしたのは小学校2年生だったといいます。丸太のカヌーの虜になり、無垢の木を掘ってみたい、カヌーを作ってみたいと父親に頼んだそう。なんと渋い小学2年生…!
そこからが原さんと「木」との切っても切れない縁の始まりでした。
高校生になり、やはり家具を自分で作りたいという気持ちはさらに膨らみ決定的なものになりました。
ー英国家具との出会い
高校卒業後、英国アンティークの家具を扱う会社に就職しました。家具作りの工程を学びたいと修理の仕事を希望しましたが、何年も見習い仕事が続く日々。
3年ほど経ち、痺れを切らして一度別の家具屋さんに転職、そこも英国家具を扱う店でしたが、家具修復のノウハウを自己流で習得していきました。
元の会社に戻った原さんは、外での修行の成果を発揮していきます。
英国やヨーロッパ家具の特徴は、とにかく何世代にも渡って使える作りになっていること。扱う家具たちはとても高級なものもあり、材木も無垢で良い素材を使い、釘や強力な接着剤などは使わず、組み立て式で簡単に解体することができます。
英国家具の修理の工程は、まず全部を解体(バラす)ところから始まるそう。
修復箇所を確認し、丁寧に直し、組み立て、塗装していく。接着剤としては「膠」(※にかわ:獣類の骨・皮・腸などを水で煮た液を、かわかし固めたもの。ゼラチンが主成分。)を使用します。膠は熱を加えると溶けることから解体がスムーズに行くのです。
長く使うことを前提に作られていることが、この工程をみてもよくわかりますね。
ーイギリスへー
仕事の関わりもあり、何度かイギリスに渡りました。印象に残るのは、仕事先の人が持つコテージで過ごした日々でした。
サフォーク州という場所では、家々のほとんどが淡いピンク色の壁をしている、とてもチャーミングな風景が広がります。木造に漆喰、そこに植物などの染色でピンク色に塗装しているらしいのですがこの色をサフォークピンクと呼ぶそうです。
家も家具と同様に、長く使う、長く使えることが良いという考えで作られています。イギリスでの日々は原さんの嗜好や美意識を刺激していきました。
ー独立ー
何社か修理の仕事を続けたあと、独立に至ります。仕入れから修理修繕、販売までの工程を全て自分で行う日々。元々あった家具をいちから自分で作ってみたいという気持ちは、存在する古家具を修理することで蘇られせることができる、そして次の人に受け渡すことができるという喜びに変わっていきました。
12年ほど独立を続けた原さんでしたが、ある日事故に遭ってしまいます。
思うように体が動かせない時期が約1年続きました。
ーそうすけとの出会いー
事故のこともあり、一人で全ての仕事をすることに限界を感じた原さんはある求人広告に目を止めます。
「古家具古道具そうすけ」
今まで英国アンティークの世界に居た原さんにとっては知らない世界、日本の古家具を扱う店でした。
ーそうすけでの半年ー
そうすけの修理場で作業している姿がとても板についているのでまだ入社して半年とは意外でありました、がそれもそのはず、修理のキャリアは35年。
しかし原さんが今まで扱っていたのは英国家具がほとんどで、そうすけで初めて日本の古家具を修理するという体験をしています。
前途しましたが、英国家具は一度バラして修復していく、釘や接着剤も使っていなく、材料は無垢材。そうすけで扱う古家具は、無垢材の家具が大半ですが、時代によっては無垢材ではない突板や集成材などの素材も使用、さらに釘やネジ、接着剤も使用することがあるため、修理工程が異なります。
しかし原さんはその違いをとても楽しんでいるといいいます。
さらに、「職人あるある」というのがあって、どこまでもつい修理してしまうというクセが抜けず、そこは監督であるそうすけの店主米倉さんの監修が入ります。
そうすけの店舗を見れば、どの家具も丁寧に最上の状態で修理され並んでいると感じますがそのゴールラインを決めるのは店主の米倉さん。
「程よいところがある」ことを学べることが新しい喜びだと原さんは語ります。
職人気質に加えてとても柔軟で、身の回りに起こることに肯定的で人生を楽しんでる原さんからは懐の広さを感じます。
取材の合間に、あの照明はあの映画の小道具で使っていたんだよねーなどと豆知識を披露してくださる。
修理倉庫での取材にて、各工程や材料について目をクルクルさせながら楽しげに案内してくださる様子にノミを初めて持った小学2年生の原さんの姿が見えてしまいました。
余談ですが、取材の後、平塚にあるantique shop menuさんという英国アンティークのお店に立ち寄った際、たまたま折りたたみ式のイギリスの机を気にしていたら、店主の石井裕人さんが声をかけてくださいました。
「いや、実は今さっき、そうすけさんで修理職人さんの取材をしていて、彼が英国家具出身だったものでこの机の話も出たので…」
すると
「原賢一!?」
と咄嗟に名前が!
「いやあ、実は僕が初めて入った会社の先輩だったんだよね」
と懐かしそうに楽しそうに話されました。なんというご縁!
「素敵」は繋がっているんだなと改めて思ったとある秋の1日でした。
細やかな修理のあれこれについては動画にまとめました!
貴重なお話です!CHECK!!
「古家具古道具そうすけ」
https://www.so-suke.com/
https://www.instagram.com/sosuke312/
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取材:合同会社ノスリ舎
https://www.instagram.com/nosuri_sha/