#5.はる
真っ白なnoteの記事を見つめること2週間と3日、なにも書けないなあと思いながら、空っぽの両手でとりあえず文字を打ってみる。
わたしの住んでいる土地では、新しい年が明けて、1月の下旬から桜が咲く。まだ縮こまってしまう程の、強く冷たい風が吹き抜けている頃だ。
それでも、この時期から徐々に気温は上がり、2月に入ると昼間は20℃前後が普通になってくる。居間でぼんやりと灯る液晶の向こう側では、雪の吹きすさぶ景色が毎日流れている。最強寒波らしい。
わたしはそれを横目に窓を開け、網戸だけを閉める。窓に反射して広がった陽の光は、もう既にわたしの肌を熱く射す。
ここは、遠い地なのだなあと思う。
桜が芽吹き、陽はあたたかで、柔らかく吹く風は、確かに冷たさを孕んでいるのに、皮膚を撫でるように通り過ぎる。
2月中旬、各地で開催されていた桜まつりが終わり、桜の樹にはみどりが差し込み始める。日中の気温は、最高24℃。部屋を通るかろうじて冷たさを残した風があたたかな空気と混じり、夏の終わりの夕暮れのように心許なく、ざわつきに揺れる。
春の訪れを、柔らかなあたたかさを、祝えたらいいとずっと思っている。
わたしはここで、言葉ひとつ掬い上げることができない。鈍くなる身体と思考で、あなたの芽吹きに、生命たちの瞬きを横たわりながら眺めることしかできない。
春眠暁を覚えず。このままどうか、みどりの繁るときまで。わたしは、春、あなたを悼んで目覚めるのを待つ。
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