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#2.ひかり

わたしの家の庭には、3本のマンゴーの樹が植えられていて、その年に実をつけようがつけまいが、みどりの葉を重たそうにもたげて、
11月頃までよく繁る。
常緑樹なので、放っておくと、とにかく繁る。おかげでうちの居間には、夏の間、みどりの葉の隙間からこぼれた薄い陽のひかりしか届かない。

だけどそれも、11月の初めまで。
3本のマンゴーの樹は、防風林の役目も果たしてくれているので、嵐の到来が和らぐ季節を迎えると、その役目はおしまいだ。

今年も家を嵐から守ってくれてありがとう。
一言、お礼を告げて、来年も果実を実らせそうな枝葉を残し、剪定する。
バサッバサッ 遠慮はなしに枝葉を切り落とす。足元が、落とされたみどりで埋もれていく。小さな羽虫が長靴にとまるのを、みどりの視界の端に捉えるが、厭わない。
わたしは必死になる。どうしたってひかりを浴びたいのだ。あたたかに、刺すような、
陽のひかりを。

朝、カーテンの隙間から漏れるひかりの束にゆっくりと醒める。
ひかりだ。ひかりの季節がやってきた。
わたしはこの日を待ちわびていた。
カーテンを開け放ち、身体いっぱいに陽のひかりを満たす。
眩しさの満ち満ちたそのひかりは、わたしを祝福しているにちがいない。

夏中、枝葉から漏れて明滅する微かなひかりを見つめていた。
薄暗さにげんなりとし、風に大きく揺らぐ葉を強張りながら眺め、雨粒を透かしながら、
ゆっくりと伸びる影を冷たい指先でなぞり、
たまに、きらきらと、畳にこぼれるひかりに手を透かしてみたりした。

小さなひかりと、今日まで生活を重ねてきた。大きなひかりを享受する日を、瞼の裏で反芻して、指折り数えた。
カーテンが開かれていくと同時に、居間いっぱいを照らしゆくその陽は、
今日までのわたしの日々に祝杯をあげている。

ひかり、光り、揺れて、揺蕩い、反射してはひろがり、つめたく、あたたかく、照らして翳る。

拝啓、おふたりさま。
ひかりを、一緒に見られたらいいと思って。
眩しくなくてもかまわない。ぼんやりと、発光していなくてもかまわない。
ひかりはひかり。傍らにあるもの。

ちぐはぐな話をしたいと思って。陽気に。
いつか、ふたりのひかりを教えて欲しい。
そうしたら、わたしたち、月のひかりを背に乾杯しましょう。


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