コンピテンシー日記|『建設部門:都市及び地方計画』技術士さんの日常(その3)
◆ 歴史的景観と未来の街づくり:技術士の挑戦
こんにちは。建設部門の都市及び地方計画を専門とする技術士です。今回は、歴史ある城下町の再生プロジェクトに携わった経験を通じて、日々実践しているコンピテンシーについてお話しします。
1. コミュニケーションとリーダーシップの実践
今週は、城下町の景観保全と活性化を目指すプロジェクトの中間報告会がありました。このプロジェクトでは、江戸時代からの町割りや建築物を活かしつつ、現代の生活ニーズに対応した街づくりを目指しています。
報告会では、地元の歴史研究家、商店主、若手起業家など、様々な立場の方々が参加されました。それぞれの思いや意見を丁寧に聞き取り、専門的な用語を避けながら、計画の意図を分かりやすく説明することを心がけました。
例えば、古い町家の保存と耐震性向上の両立について質問が出た際には、伝統工法と現代技術を融合させた「町家再生工法」の事例を紹介し、具体的なイメージを共有しました。また、空き家の活用策として、若手クリエイターの工房やゲストハウスへの転用案を提示し、地域の活性化につながる可能性を示しました。
議論が白熱し、意見が対立しそうになった場面もありましたが、「歴史を活かし、未来につなぐ」というプロジェクトの理念に立ち返り、互いの立場を尊重しながら合意点を見出すよう促しました。
このような場面で求められるのが、技術士としてのコミュニケーション能力とリーダーシップです。多様な意見を集約し、プロジェクトの方向性を示すことが、私たちの重要な役割なのです。
2. 評価とマネジメントの実践
プロジェクトを進める上で、常に現状の評価と将来予測に基づいた判断が求められます。今回のケースでは、歴史的景観の保全と、地域の経済活性化という二つの軸で評価を行いました。
まず、町並みの現状調査を実施し、歴史的価値の高い建造物や修復が必要な箇所を特定しました。同時に、観光客の動線や滞在時間、消費行動などのデータも収集・分析しました。これらの情報を地図上に可視化することで、重点的に整備すべきエリアが明確になりました。
また、プロジェクトの実現可能性を高めるため、段階的な整備計画を立案しました。初期段階では、比較的少ない投資で効果が見込める案内サインの整備や小規模なイベントスペースの創出から始め、徐々に規模を拡大していく戦略を提案しました。
このプロセスでは、データに基づく客観的な評価と、限られた資源を効果的に配分するマネジメント能力が不可欠です。技術士には、こうした総合的な判断力が求められるのです。
3. 技術者倫理の実践
歴史的な街並みを扱う際には、保存と活用のバランスが常に問われます。今回のプロジェクトでも、電線の地中化や道路の拡幅など、現代的なニーズへの対応が求められる場面がありました。
こうした局面で、私たちは単に技術的な解決策を提示するだけでなく、その影響を多角的に検討する必要があります。例えば、電線地中化の計画では、景観向上の効果と、工事による歴史的建造物への影響、そして地域住民の生活への一時的な不便さなどを総合的に評価しました。
結果として、段階的な地中化と、一部区間での軒下配線方式の採用を提案しました。これにより、景観改善と住民生活への配慮を両立させる道筋を示すことができました。
技術者倫理の実践とは、このように目先の利益だけでなく、長期的な視点で社会や環境への影響を考慮し、公正な判断を下すことです。私たち技術士には、常に高い倫理観を持って業務に当たることが求められているのです。
4. 継続研さんの実践
技術士として、常に新しい知識や技術を吸収することは欠かせません。先日は、「歴史的街並みの3D映像化技術」に関するワークショップに参加しました。
このワークショップでは、ドローンによる空中撮影と地上からのレーザースキャンを組み合わせた、高精度な3Dモデリング技術を学びました。この技術を活用すれば、現存する歴史的建造物の詳細な記録保存が可能になるだけでなく、失われた建造物の仮想復元にも応用できます。
また、AR(拡張現実)技術を用いた街歩きガイドシステムの実演も行われ、観光振興への新たなアプローチを知ることができました。
このような最新技術の動向を把握し、自身の業務にどう活かせるかを考えることは、技術士として不可欠な姿勢です。社会のニーズと技術の進歩は日々変化しており、私たちもそれに応じて成長し続ける必要があるのです。
◆ 今日の学びと受験生へのアドバイス
今回のプロジェクトを通じて、改めて「バランス感覚」の重要性を実感しました。歴史と現代、保存と活用、専門性と分かりやすさ—こうした一見相反する要素のバランスを取りながら、最適解を見出していくことが技術士の醍醐味だと言えるでしょう。
技術士試験に挑戦する皆さんへ。知識や技術の習得はもちろん大切ですが、それらを実社会でどう活かすかを常に考える習慣をつけてください。新聞やニュースで目にする街づくりの課題に対し、自分ならどうアプローチするか、頭の体操をしてみるのも良いでしょう。
また、様々な立場の人々と対話する機会を積極的に設けてください。技術士の仕事は、専門知識を持つ者同士の議論だけでなく、地域住民や多様な関係者との協働が基本となります。コミュニケーション能力を磨くことは、皆さんの大きな強みになるはずです。
技術士としての日々は、常に新たな挑戦の連続です。しかし、その一つ一つが、よりよい社会づくりにつながっているという実感が、この仕事のやりがいなのです。皆さんも、自身の専門性を活かしながら、社会に貢献できる技術士を目指してください。
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