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コンピテンシー日記|『建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋』技術士さんの日常(その3)


◆砂防事業における地域連携と技術革新

 今日は、山間部での砂防事業の現場視察と地元住民との意見交換会がありました。近年の豪雨による土砂災害リスクの増大を受け、この地域では新たな砂防ダムの建設と既存施設の機能強化を進めています。

①コミュニケーション、リーダーシップ

 現場視察では、地元の区長さんや林業関係者の方々も同行されました。砂防ダムの建設による渓流環境の変化や、工事中の騒音・振動に対する懸念が聞かれました。私は、砂防ダムの必要性を説明しつつ、環境への配慮や工事中の対策について丁寧に説明しました。
 特に、魚道の設置や表面に自然石を用いるなど、生態系への影響を最小限に抑える工夫を強調しました。また、工事車両の通行時間帯の制限や防音シートの使用など、具体的な対策を提案し、地域の方々の理解を得ることができました。
 若手技術者には、専門用語を避け、図や模型を使って分かりやすく説明することの重要性を伝えました。技術的な正確さと伝わりやすさのバランスを取ることが、技術者の重要なスキルであることを実感してもらいました。

②評価、マネジメント

 意見交換会では、事業の進捗状況と今後の計画について議論しました。私は、最新の気象データと地形解析結果を用いて、現在の計画が将来的にも有効であるかを評価しました。その結果、一部区間で土砂捕捉量の増強が必要であることが分かりました。
 この課題に対し、既存の不透過型砂防ダムを透過型に改良し、平常時の土砂流下を確保しつつ、大規模出水時の土砂捕捉能力を高める案を提示しました。これにより、防災機能の向上と渓流環境の保全を両立できると考えたのです。
 また、工程管理の観点から、渇水期に集中して作業を行うことで、工期短縮とコスト削減を図る提案をしました。地域の気象特性を考慮したきめ細かな工程計画の重要性を、チーム全体で共有しました。

③技術者倫理

 会議中、コスト削減のために一部の構造物で品質を下げる提案がありました。しかし、私は技術者倫理の観点から、人命を守る砂防施設の品質低下は許されないことを強く主張しました。
 代替案として、新素材や新工法の導入によるコスト削減の可能性を探ることを提案しました。例えば、高強度繊維補強コンクリートの使用による部材の薄肉化や、プレキャスト製品の活用による工期短縮などです。この提案は、若手技術者たちに技術革新と品質確保の両立を考える機会を与えました。

④継続研さん

 視察後、私は最新の土砂災害対策に関する論文を読み、特に植生を活用した斜面安定化技術について学びました。この技術は、従来の構造物による対策と比べて環境への影響が少なく、長期的なコスト面でも優れている可能性があります。
 また、来週予定されている砂防学会のワークショップへの参加を若手技術者に呼びかけ、継続的な学習の重要性を伝えました。このワークショップでは、気候変動を考慮した砂防計画の立案方法について議論される予定です。


◆今日の学びと受験生へのアドバイス

 今日の経験を通じて、技術士には専門知識だけでなく、地域社会との対話力、複合的な視点での事業評価能力、そして常に学び続ける姿勢が求められることを再認識しました。
 
 技術士試験の受験生の皆さんへ。技術的な知識を深めることは大切ですが、それを実際の現場でどう活用し、地域の課題解決につなげるかという視点を持つことが重要です。日々の業務や学習の中で、技術的側面だけでなく、環境保全や地域振興といった幅広い観点から考える習慣をつけてください。

 また、継続的な学習の重要性を忘れないでください。技術の進歩は速く、社会のニーズも変化し続けます。常に新しい知識や技術を吸収し、それを実務に活かす努力が、プロフェッショナルとしての責務です。

 技術士として働く毎日は、新たな挑戦の連続です。しかし、その一つ一つが自身の成長につながり、社会に貢献する喜びを感じられる素晴らしい経験となります。皆さんも、この魅力的な世界に飛び込む準備を着実に進め、技術を通じて社会に貢献するという技術士の使命を胸に、日々の研鑽に励んでください。


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小泉士郎&H|技術士(建設・総監部門)|R7筆記試験対策|セルフケア
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