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コンピテンシー日記|『建設部門・鋼構造及びコンクリート』技術士さんの日常(その3)


◆大規模集合住宅の耐震改修プロジェクトから学ぶ技術者の役割

 今日は、築40年を超える大規模集合住宅の耐震改修プロジェクトの kickoff ミーティングに参加しました。この経験を通じて、技術士として求められる様々なコンピテンシーを実践する機会を得ました。

1) コミュニケーション・リーダーシップ

 ミーティングでは、プロジェクトの概要説明と各部門の役割分担を行いました。建築構造、設備、施工、そして住民代表など、多岐にわたる参加者がいる中で、技術的な内容を分かりやすく説明することに注力しました。特に、耐震改修の必要性と工事中の生活への影響について、住民代表の方々の不安や疑問に丁寧に答えることで、プロジェクトへの理解と協力を得ることができました。
 また、若手技術者たちにも積極的に発言を促し、彼らの新鮮な視点や提案を取り入れる雰囲気づくりを心がけました。これにより、世代を超えた知識の共有と、チーム全体のモチベーション向上につながりました。

2) 評価・マネジメント

 耐震診断の結果を基に、補強工法の選定と優先順位付けを行いました。特に、既存不適格である柱のせん断補強と、新設する耐震壁の配置計画について、構造性能、施工性、コスト、居住性への影響など、多角的な視点から評価を行いました。
 具体的には、従来の鋼板巻き立て工法に加え、最近注目されている連続繊維シート補強工法についても検討し、それぞれの特徴を比較表にまとめました。この過程で、チームメンバーの専門知識を最大限に活用し、客観的なデータに基づいた意思決定を行うよう心がけました。
 また、工事の段階的実施計画を立案する際には、居住者の生活への影響を最小限に抑えるため、棟ごとの工程を細かく調整しました。この際、クリティカルパス法を用いて最適な工程を検討し、全体の工期短縮と仮設費用の削減を実現しました。

3) 技術者倫理

 プロジェクトの計画段階で、一部の区画で想定以上の劣化が見つかりました。これにより、当初の予算を超過する可能性が出てきましたが、建物の安全性を最優先に考え、必要な補強を行うことを提案しました。
 また、工事中の騒音や振動が居住者や近隣住民に与える影響を考慮し、法令で定められた基準以上の対策を講じることを提案しました。具体的には、低騒音・低振動工法の採用や、作業時間の細やかな調整などを計画に盛り込みました。これらの提案は、短期的にはコスト増加につながりますが、長期的には建物の価値向上と地域社会との良好な関係構築に寄与すると考えています。

4) 継続研さん

 今回のプロジェクトでは、既存建築物の耐震改修に関する最新の技術動向を把握する必要がありました。そのため、日本建築学会の「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針」の最新版を詳細に学習し、特に新しく追加された補強工法について理解を深めました。
 また、建築物の長寿命化に関する国土交通省の最新のガイドラインも参照し、今回の耐震改修が将来の維持管理計画にどのように影響するかについても検討しました。これらの学習を通じて、単なる耐震性能の向上だけでなく、建築物のライフサイクル全体を見据えた改修計画の重要性を再認識しました。

◆今日の学びと受験生へのアドバイス

 今日の経験を通じて、技術士には専門的な知識や技術力だけでなく、多様な関係者との調整力や、社会的責任を踏まえた判断力が求められることを改めて実感しました。特に、既存建築物の改修という複雑な課題に取り組む中で、技術的な最適解と社会的な要請のバランスを取ることの難しさと重要性を学びました。

 技術士試験の受験生の皆さんへは、以下のアドバイスをお伝えしたいと思います。

1. 自身の専門分野の知識を深めるとともに、関連分野の基礎知識も幅広く学ぶこと
2. 実務経験を通じて、技術的な問題解決能力を磨くとともに、そのプロセスを論理的に説明する練習をすること
3. 技術者倫理に関する事例研究を行い、自分なりの判断基準を持つこと
4. 最新の技術動向や法令改正に常にアンテナを張り、継続的に学習する習慣をつけること
5. 様々な立場の人とコミュニケーションを取る機会を積極的に作り、調整力を養うこと

 これらの実践を通じて、単なる知識の蓄積ではなく、実社会で活躍できる技術者としての総合的な能力を身につけていってください。皆さんの挑戦と成長を心から応援しています。


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小泉士郎&H|技術士(建設・総監部門)|R7筆記試験対策|セルフケア
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