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「日本型雇用」のリアル

リクルートワークス研究所が”Global Career Survey 2024”のレポートを上げている。日本型雇用と言われているものの実態は何なのか?について他国の状況と比較した大規模な調査から明らかにした内容だ。

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"日本型雇用とは" と聞かれると、どのような制度や仕組みが思い浮かぶだろうか?新卒一括採用、終身雇用、年功序列、企業主導の人事異動、OJTをベースにした現場主導の育成、そして企業別労働組合など、日本型雇用の特徴としては、これらのような仕組みが一般的に挙げられるのではないだろうか。これらの特徴は本当に日本企業特有なのか、一つ一つの項目に整理してレポーティングされている。

新卒一括採用

・日本は卒業後すぐに初就職する割合が他国と比較して極端に高い。
・卒業前の就職や卒業後6ヶ月以内に初就職を含める割合で比較すると日本も他国も同水準であった。
○ 新卒一括採用は日本型雇用の特徴といえる。

企業主導の人事異動

・業務命令による職種及び勤務地変更の可能性と経験率は日本が最も高い。
業務命令「以外」も含めた職種や異動の変更率は他国と比べて日本は最も低い。
・他国の職種や勤務地変更は会社側から打診され本人が同意する。もしくは本人希望で変更が決まる事がほとんどである。
○ 企業主導の人事異動は日本型雇用の特徴といえる。注目すべきは、ジョブローテーションを通して人材育成をする風潮だと思われた日本の異動や職種の変更率は他国と比べて最も低い事である。

年功型賃金

・日本だけではなく、どの国も年齢の増加と共に賃金は上がる傾向。
・職務遂行能力が給与に影響していると思うか?という質問に対して、わからない。の回答が他国より多く、影響している回答が他国より少ない。 つまり、日本の評価・報酬のある柱である職能給(仕事を遂行する能力で給与を決める制度)は日本で働く従業員には浸透しきっていないかもしれない。
✖︎ 年功型賃金は日本型雇用の特徴と言えない。

OJTによる育成

・日本は一定のOJTプログラムの有無を関わらず、OJTを受けた。の割合が他国と比べて極端に少ない。
・日本のOJTの多くがプログラムの無い現場での先輩や上司の独自の指導に委ねられている。
・日本ではOJTは若い層が受ける傾向にあるが、他国は年齢による傾向が少ない。
✖︎ OJTによる育成は日本の雇用の特徴ではない。

幹部の内部登用

・日本は他国よりも内部登用の割合が多いものの、他国においても内部登用の割合が外部登用よりも多い。
・日本には自社の幹部がどのように起用されているか分からないと回答する割合が4割程度と他国と比べて高い。
○ 幹部の内部登用は日本型雇用の特徴と言える。

終身雇用

30.40代の勤続年数は日本は他国に比べて高い傾向にあるが、40代では中国が最も高い傾向にある。また、他国でも勤続年数5年以上が6割以上を占めている。
・日本は勤続年数が長いものの、今の会社は自分を雇い続けてくれるかという問いに対して、分からないと回答した割合が他国と比べてもっとも多い。
△ 終身雇用は日本型雇用の特徴だとある程度言える。

企業別労働組合

・日本では約半数が労働組合に加入しているが、そのほとんどが企業別の労働組合に入っている。
・他国でもほとんどの国が企業別の組合加入の割合が最も大きいが、職場外の組合に加入している割合も一定数存在する。
・日本は他国と比べて労働組合の役割を認識していない割合が約3割と多い。
△ 企業別労働組合は日本型雇用の特徴だとある程度いえる。


日本型雇用の規模は?

・上記に挙げた日本型雇用の7つの特徴に該当するか?の回答割合として、新卒一括採用は8割以上を占め最も多かった。次に年功型賃金が7割以上だったが、これは日本だけの特徴ではない事を先に述べている。
・割合として低かったのはOJTを受けたか及び、企業主導の人事異動となった。
・日本型雇用の特徴だと思われた7つの特徴全てに当てはまる人は3.2%しかいなかった。
これらの結果は雇用情勢などの変化を受け、企業が雇用条件を部分的に緩め柔軟に対応していることを示唆するのかもしれない。あるいは、7つの特徴全てを満たすような日本型雇用のあり方は、大企業の中でも製造業など特定の領域にのみ存在するのかもしれない。

<まとめ>

日本はOJTが少なく、業務命令の異動が他国より少し多いだけで、異動経験率は他国とそれほど変わらないという事実は「定期異動とOJTによって幅広い職務経験を持つジェネラリスト人材を育成していく。」という日本型の典型的なイメージを覆した。

また、何が給与に影響するのか?幹部がどのように登用されているのか、異動可能性があるのか、分からない。という回答が目立った。Yes/Noをはっきり示さない日本人の特性も影響しているのかもしれないが、自らのキャリアや雇用のあり方についてブラックボックス化している現状は国としての競争力を高めていくための大きな枠での適所適材を実現するに当たって乗り越えるべき壁になるだろう。自身のキャリアや雇用を自律的・主体的にそれぞれが責任を持って考える事が社会全体で雇用の流動性を適切に起こす鍵となると私は思う。

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