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子どもの性被害—現状と解決策を考える

日本では子どもの性被害が深刻な問題となっています。この問題は個人だけでなく、社会全体で取り組むべき課題です。

この記事では、3keysの“子どもを取り巻く現状”とAMP Mediaの“子どもの性被害の実態”をもとに現状をわかりやすく解説し、解決に向けた考察を記載したいと思います。


① 性被害の現状

調査によると、日本では10人に1人の子どもが性被害を経験していると言われています。その多くが、家庭や学校など本来は安心して過ごせる場で起きているのが現状です。また、加害者の多くは子どもが信頼している大人であるケースが多く、被害が表面化しにくいという問題もあります。

さらに、被害の多くは警察や相談機関に届いておらず、表に出ているのは氷山の一角に過ぎません。このため、支援を受けられず苦しむ子どもたちが多いのが実態です。

② 子どもを取り巻く課題

  1. 信頼関係がある加害者
    性被害の多くは、信頼している人からの行為によるものです。このため、子どもが被害を被害と認識しづらかったり、恐怖や混乱から声を上げられなかったりします。

  2. 性教育の不足
    日本では性に関する教育が不十分であるため、子どもたちは性暴力の危険性や、自分の体を守る方法を知らないことが多いです。性に関する話題がタブー視される風潮も、問題の根深さを助長しています。

  3. 支援窓口の周知不足
    被害にあった子どもが頼れる相談窓口や支援機関が少ない、あるいはその存在が知られていないため、多くの子どもが助けを得られずにいます。

③ 性犯罪に関する規定が改正される

日本では、2023年7月13日に「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)および「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」が施行され、性犯罪に関する規定が大きく変わりました。改正のポイントは以下の7点です。

1. 強制性交等罪から「不同意性交等罪」へ
従来、強制性交等罪の成立要件となっていた「暴行」、「脅迫」のほか、「アルコール」、「薬物」、「障害」、「睡眠」、「フリーズ状態」、「虐待」、「立場による影響力」などが原因となって、被害者が「同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが難しい状態」、つまり、「Noと思うこと、Noと言うこと、Noを貫くことが困難な状況」で、性行為やそれに類似する行為がなされた場合は、「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」として処罰の対象となります。
2. 被害者の年齢による処罰範囲の拡大 (13歳⇒16歳)
16歳未満(15歳以下)の子供に対して、性交等やわいせつな行為がなされた場合は、同意の有無にかかわらず処罰の対象となります。相手が13歳以上16歳未満の時は、行為者と5歳以上差があることが必要です。
3. 「性交等」の定義の見直し
旧法では性交、肛門性交、口腔性交が処罰の対象となっていましたが、今回の改正によって、「性交等」には、膣・肛門に身体の一部または物を挿入するわいせつ行為も含まれることになりました。
4. 「撮影罪」・「提供罪」の新設
人の性的な部位や下着などに対する以下のような行為は「撮影罪」・「提供罪」として処罰の対象となります。
①:正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為
②:「イヤ」と言っているのに無理矢理撮影する行為・「イヤ」というのが難しい状況で撮影する行為
③:①、②で撮影された写真・動画を人に提供する行為
5. 「16歳未満の者に対する面会要求等罪」の新設
16歳未満の子供に対して、わいせつの目的で以下のような要求を行うことは「16歳未満の者に対する面会要求等罪」として処罰の対象となります。
①:脅す、嘘をつく、甘い言葉を使うなどして会うことを要求すること
②:拒まれたのに繰り返し会うことを要求すること
③:金銭や物を与える、またはその約束をして会うことを要求すること
④:①~③の結果、会うこと
⑤:その子供の性的な写真や動画を撮影して送信するように要求すること
6. 公訴時効の延長
性犯罪に関する公訴時効は、被害に遭った時(18歳未満の時は18歳になった時)から「不同意性交等致傷罪などは20年」「不同意性交等罪などは15年」「不同意わいせつ罪などは12年」に延長されました。
7. 被害者の供述記録の取り扱いに関する規定の新設
被害者の供述記録(録音や録画)について、一定の条件下ではこれを証拠とすることができるようになりました。一定の要件を満たす場合に限り、被害者に証人尋問(主尋問)を行う代わりに、事情聴取時の録音や録画などを証拠として取り調べることが認められます。

性犯罪被害者のメンタルヘルス情報ページ

④ 義務教育で性交を教えないという矛盾

こういった性被害をとりまく法律がある一方で、日本の文部科学省が定める学習指導要領には、1998年以降、通称「はどめ規定」と言われる記載が存在します。学習指導要領に記されている性に関する「はどめ規定」は以下の2つです。

小学5年 理科:「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」
中学1年 保健体育科:「妊娠の経過は取り扱わないものとする」

文部科学省 「小学校学習指導要領 (2017 年告示 )」「中学校学習指導要領 (2017 年告示 )」より

この「はどめ規定」によって、義務教育の教科書に性交に関する記述はなく、学校教育の中で性交について教えることは避けられる傾向があります。16歳以上(2023年の法改正までは13歳以上)であれば、暴行・脅迫がない性行為は法的に本人が同意した性行為だと見なされるにも関わらず、義務教育の中でこれらについて学ぶ機会はないのが日本の現状です。

性交や同意の重要性を取り扱った授業が中学生段階でおこなわれないのであれば、その年齢の子どもたちに性行為について同意があったと法律で認めることには、大きな矛盾があります。

⑤ 解決へのステップ

  1. わかりやすい性教育の導入
    子どもたちが性暴力から身を守る方法を学べるよう、年齢に応じた性教育を導入することが必要です。また、被害を受けた場合にどうすればいいかを教えることで、声を上げやすくする環境を作ります。

  2. 性被害について話しやすい社会へ
    性に関する話題をタブー視しない風潮を作ることが重要です。メディアや学校、地域社会が協力し、性被害について話しやすい環境を整えましょう。

  3. 支援体制を強化する
    子どもたちが安心して相談できる窓口を増やし、その存在を周知させる必要があります。さらに、支援者の研修を充実させることで、より質の高いケアを提供することが求められます。

⑥ 子どもたちを守るために

性被害から子どもを守るためには、私たち一人ひとりが問題を他人事とせず、できることから始めることが大切です。性教育の普及や支援体制の強化を進めるとともに、性被害について話しやすい社会を作ることで、子どもたちが安全に過ごせる未来を築いていきましょう。

この記事を読んで、この問題についてもっと知りたい方や協力したい方は、ぜひシェアや情報提供をお願いします。


(参考)多くの「性犯罪」が処罰されない。先進国と比べて、こんなにも遅れている日本の現状
https://ampmedia.jp/2021/10/09/sex-crimes/amp/

(参考)日本は性犯罪に寛容? ~性交同意年齢は13歳、主要国で最低
https://3keys.jp/issue/d01/

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