日記

6月24日(金) 熱波ときどき寒波
6月の末ということもあり、スイカが食べたくなった。起きてすぐ着替え商店街へ。
さすが6月の熱波だ。2年前に買った防護服(チャイナver.)もそろそろ寿命らしい。歩く度に破れた袖付近のアルミがチカチカして目にうるさかった。
八百屋の前に防護服屋に寄った。懐と相談した結果、目にはもう少しうるささに耐えてもらうことにした。今度は目がうるさくなりそうだからサングラスを買おう。もう少し待ってておくれ!

さて、八百屋に着いた。いつ見ても不気味だ。陳列された野菜たち、果物たちの物言わなさ。調教が見て取れる。畑でのやかましさがここでは気配すらない。商品になること、それ自体を誇りと思っているものもいれば、調教で感情や言葉を失ったものもいるのだろう。前者は生食、後者は加工食に向いている。プライドが高そうなスイカを見つけなければと思い、緑と黒の縞模様とにらめっこをした。数十個見たが本当にわからなかった。最終手段として岩塩を見せてみた。奥のスイカが、岩塩を見た瞬間に縞模様を震わせた。見つけた。誇り高きスイカは塩を振られることに嫌悪する。
八百屋から褒められて気分が良くなったのか、買ったスイカをドリブルしながら帰った。せめて見かけだけでも弾ませようとしたのに、本当に嫌な顔をされた。帰宅した途端に熱波が止まり、ぬるい風が玄関から部屋に侵入した。冷凍しておいた蛍光灯が、天井から光を漏らした。まだ昼だと言うのに!
ボロの防護服のおかげで左腕が真っ赤になっていた。白から黒に変色した後はもうずっと黒のままかと思っていたが、熱エネルギーとは素晴らしい。エネルギーの変換による金策が騒がれているのも頷ける。私たちでは手の届かない領域の話、としか騒がれていないのだけれど。

あの熱波をくぐり抜け、最終手段で選んだスイカは最高な状態で食べたい。食べたかった。
寒波だ。寒い中で食べるスイカなど…。
体を温めるために鍋を作ったが、その後にスイカなど…。スイカのことを考えていたせいか、気づいたら鍋は空に、腹は満たされていた。
ふとスイカを見ると(ざまぁみろ)といった表情だった。縁石の角にぶつけてしまい、少し入ったヒビがそう見えただけかもしれない。
激しさを増す寒波と同様に、スイカ欲が増幅してきた。何も考えずにスイカを切った。甘い果汁は手に付くとベトついてイライラした。もっとも寒波へのイライラありきだが。
窓にコツンと雹が当たった。このスイカを凍らせてやろう。やはり少年の心は消えないのだ。窓を開け、切ったスイカに寒波を浴びせる。凍った。カチカチだ。持ち手から熱が奪われていく。危なかった。赤くなった左手がまた氷の白に変色するところだった。スイカに棒を突き刺し、再度外へ。完璧だ。シャクという音とともに口の中が冷やされる。塩のことなどすでに忘れていた。これは売れる。明日から商品化を考えてみよう。商品名はそうだな....…。
おやすみ。

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