日記

7月4日(月) 霧ときどき闇

高すぎる湿度に、嫌気がさす。まとわりつく水滴たちがもう少し冷たければこんな気持ちにはならなかった。物理法則を改変してH2Oの沸点を下げたい。

法則を変えよう。偉人らが発見したことを白紙に戻そう。気温は常に平坦で、日照時間もきっかり9時間、風は常に吹いている、そんな夏。
ヒトという種が過ごしやすいよう、理不尽も不条理も正義も悪もない夏。

溶けだした氷が「カロンッ」と鼓膜を揺らさない、たまに吹くぬるい風が風鈴を撫でることのない、2人の子どもが並んで扇風機に当たることの無い、電気代をケチる両親が苦い顔をしながらエアコンのリモコンをとらない、家の玄関前に水をまく老人がいない、アスファルトの上で焼かれてしまうセミがいない、そんな夏。

硫黄の匂いが全くしない、氷を削る音のない、人混みと熱に揉まれることのない、水ヨーヨーを欲しがる子どものいない、子どものために水筒を準備する母親のいない、たまの休みにも関わらず暑さで項垂れている父親のいない、冷風を全身で浴びながらマッサージチェアで休む祖母のいない、孫のために竹細工を汗だくで作る祖父のいない、そんな、夏。

風流だ、趣がある、そんな言葉に惑わされるな夏は災害だ。高熱を浴びせてくる太陽、遠巻きに眺め何も出来ない月、自転によりまんべんなく地表をグリルする地球。自然は敵だ。

海はやってこない。そこに在る。それだけ。
熱に項垂れる我々の終着駅。
焼かれた我々に最後の味付けをする最終工程。

食べられようじゃないか。
塩分過多で殺してやろう。

ヒトが滅べば神も滅ぶ。次世代のヒトもまた神を作るだろう。そして滅ぼす。滅ぼそうともせず、無意識に、しかし意図的に。

かくして、夏に反発する生き物の反逆の狼煙は絶えず上り続けているが、その対象が内に潜んでいることに気付いていない、いや、気付いているのだろう。気付かないフリをして正当化している。自分たちを。言動を。正しいのだ。この行為こそが正解なのだ。心理なのだ。と、自己暗示をかけている。

その暗示を強くする季節が夏なのだ。
熱は我々を震わせる。
恐怖と快楽に。嫌悪感と多幸感に。

とことん戦おう。内に秘めたる熱にアキが来ないように。

おやすみ。

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