とあるお風呂《プール》の無際限性《インフィニテネス》
「なんか凄いお風呂があるらしいんだけど」
「ほう」
「インフィニティ・プールって云うんだって」
「知らない。何それ?」
「私も分かんない。それがこれからやるんだって」
「へー、どんなだろう。……あ、シーエム」
「ああもう!」
「焦らしてくるね」
「余計気になるやつ」
「じゃあシーエム明けるまで、どんなのか予想してみる?」
「うん」
「無限のお風呂なんだよね?」
「そうみたい。これからやるのは温泉って話」
「じゃああれだ、とんでもなく湯船が広い。無辺の湯船」
「見渡す限りどこまでも湯船って、嫌でもずっと出られないじゃん! 逆上せちゃうよ」
「なるほど、無辺湯船は永劫長湯か」
「お風呂で迷子で遭難とか、嫌なんだけど! 裸だよ?!」
「それなんて湯幻郷?」
「全然理想郷じゃないから。第一、そんな広いお風呂のお湯、どこから持ってくるの? 温泉なんだよ?」
「無尽の湧出、そしてそれを確保する無窮の貯蔵。確かにインフィニティ・プール。まさにインフィニティ・プール。つまりインフィニティ・プールは無辺湯船だから永劫長湯なんだけど、それを無限に満たす無窮貯蔵からの無尽湧出が必要なわけか」
「わけか。……じゃないよ、訳が分からないよ」
「これは期待が高まるインフィニティ・プール!」
「あ、シーエム明けたよ?」
「一体どんな温泉なのかわくわくするなあ」
『お待ちかね、今話題のインフィニティ・プールをご覧ください! この渺茫たる眺望――』
「あー、こういうことかー。凄いじゃん」
「あー、借景かー」
「湯船がそのまま海に繋がってるように見えるんだね。ん、どした?」
「うん。これもさ? いや、十分凄いんだよ?」
「無駄に無限を夢想したばっかりに、……儚いねー」
「広いは広いけど無辺じゃないし、永劫でもなければ、無尽でもなくて、無窮の必要も無かった。そりゃあ、そうだよね。うん」
「無謀な期待が無情に砕かれちゃって」
「現実に無際限性なんて持ち込むもんじゃないんだよ」
「ん? フィットネスもあるみたいだけど?」
「ん? ああ、やっぱり再現度には限度があるってことだよなあ。無念」
「インフィニティ風呂」は「永劫長湯」「無辺湯船」どっちとも訳せて、現物見るまでシュレーディンガーの猫状態。
— sori (@soriitisuisu2) September 23, 2021
しかも、重なり合った状態のままの「無辺湯船で永劫長湯」みたいな脱出ゲーム的監禁状態も成立してしまう。
誤訳じゃない分、virtualよりも性質が悪い。 https://t.co/Od0SLsc2xk
いいなと思ったら応援しよう!
