祖父と孫。ハンバーグラーの行動原理
マックのあいつをご覧になっていない方は、まずはそちらをご覧ください。
経緯を理解された上で、二次創作構わんよという方はどうぞお進みください。
「お爺ちゃん。身体を悪くして夜盗は引退したのに、そっちはいつまで続けるんだよ? あんなにかっこよかった夜盗装束のダサいコスプレ衣装みたいのまでわざわざ用意しちゃってさ」
「私にはね、あの人に恩があるんだ。返さなくちゃならない恩がな。だからその恩を返しきるまでは引退してもこっちだけは続けるんだよ」
「でもその身体じゃ、……もう限界だよ! 長生きしてくれるって約束したじゃんか」
「私自身もそんなに長くは続けられるとは思っていないよ。だけどね、限界かどうかは自分で決めるんだ。最後の最後の瞬間まで本当に本当に限界なのか、自分に問い続けるんだ」
「もういい。……分かった。俺が尊敬するお爺ちゃんは、言ったことは曲げないって知ってるから。だから分かった」
「それでいい」
「だから、……だったら俺がハンバーグラーになる! どんな恩かは知らないけど、お爺ちゃんの恩なら俺の恩でしょ。ハンバーグラーの限界は俺が決めるんだ!」
「そりゃ頼もしいな! はっはっは」
「本気だからね!」
「そうかそうか。お前が本気で恩返しを肩代わりしてくれるなら、そうだなあ、……お前が立派な大人になる頃には返し終わるかな?」
「ちょっ、長すぎ! お爺ちゃんは俺を何だと思ってるんだ?!」
「そりゃ何物にも代えがたいかわいい孫だよ。だからハンバーグラーの恩返しはお前が立派な大人になってやっと果たされるんだ」
「またそうやって子供だと思って馬鹿にして煙に巻くんだ」
「煙に巻くのも夜盗の芸の内だからな」
「そんなんで、どう恩返しになるんだよ?!」
「お前がそれが分かるようになる頃には、きっと恩が返し終わってるよ」
「ほらまた次の煙だ。もういいよ、今は分からなくても。どっちにしたってハンバーグラーは俺がやるんだから」
「ならまず、ピクルスは食べれられるようになっておかないとな?」
「うえぇ。……ポテトじゃ駄目?」
「駄目だ。……美味すぎて盗みたくなるハンバーガー。これがハンバーグラーの行動原理だからな」
「自分の夜盗時代の劣化コスプレしてまで? あんなの目立ってしょうがないって」
「あっちと違って、こっちはいい具合に目立つことが大事なんだよ」
「それも煙?」
「煙かって訊かれたら、強いて言えば花火だな」
「……だからお爺ちゃんはさー!」
「ん? あー。お前にはちょっと早かったか。まあまだ分からなくていい。これから少しずつだ! な?」
「じゃあそうと決まったら、早速コスチュームのデザイン考えなくちゃ。あんなダサいの絶対に嫌だからね。一刻も早くお爺ちゃんをハンバーグラーから引退させてやるんだ」
「まあ、好きにやってみなさい」
「うん! じゃあすぐに描いて来るからどこにも行っちゃ嫌だからね」
「ああ、分かった分かった。……だけどお前は分からなくていいんだよ。あの人がお前の命を救ってくれたってことはね。それにお前が大きくなるのを傍で見届けてもらうのが何よりの恩返しになるだろうから」