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「感性が一緒ってことはさ、やっぱり気が合うんだろうね」 「一緒が苦じゃないのは、とても大切なポイントだね」 「どこまで一緒なのか確かめてみたくなっちゃう」 「同じであることに重きを置くなら、深掘りは程々が良いと思うな。小さな違いで罅が入る」 「じゃあ罅を入れたい時にする」 「怖いよ」
「とりあえず同意しとけば人間関係はだいたい巧くいく」 「それな」 「とにかく否定はしない方が良い」 「分かる」 「それだと誰かを貶す発言の対応で板挟みになるんだよ」 「なるなる」 「俺は自分の本心と無関係な問い掛けで、そいつがどう答えるか観察するんよ」 「やるやる」 「お前、できるな」
「ねえ、貰い泣きって共感?」 「たぶん」 「貰い欠伸は?」 「共感かなあ」 「貰いゲロは?」 「どうかな」 「誘い笑いは?」 「微妙だねえ」 「貰い羞恥は?」 「共感じゃないか?」 「じゃあ貰い欲情はある思う?」 「……ああ、そういうこと」 「これって共感なのかなあ?」 「もう共感でいいよ」
「察しの良い人、気が利くは持てるじゃん?」 「そりゃね。色恋でなくても重宝されるよ」 「小さなシグナルも見逃さず、相手のことを察する力。でも俺は名探偵でもプロファイラーでもサトリでもテレパシストでもないからさ、共感する感覚、共感覚。これを磨こうと思うんだ」 「それは何か違うと思う」
「春休み期間って、何かと忙しくて」 「春休みはね、一つの恋が終わってから次の恋が始まるまでの、恋のお休み期間なんだよ! 次の恋に備えるんだもん。だからしっかり休まなきゃだし、準備も当然怠れない。どうしても忙しくなっちゃうのはさ、仕方のないことだよ」 「ほんと春満開だね」 「だねー」
「春一番は、立春から春分まで間に初めて吹く南寄りの強風を指すんだって。事故に警戒するために発表されるんだとか」 「春一番は立春、つまり思春期を自覚して初めての嵐のような恋のことなんだよ! そうしてやがて春分を迎え、弁えを知り一つ大人になるの」 「そうなんだ。春満開だね」 「だねー」
「春眠暁を覚えずっていうのはね、相手のことが気になって気になって寝付けずに悶々としてる間に夜が明けてしまって気付かないってことなんだよ!」 「そうなんだ」 「で、春は曙はね、恋は相手のことを好きって自覚して認める直前、これが趣深いよねってことなんだよ!」 「春満開だね」 「だねー」
「乾物や燻製って実質ミイラだよな」 「分からなくはないが」 「ドライフルーツは果物ミイラで、干し芋は芋ミイラ。米や小麦粉は種ミイラってことになる。つまりミイラはほぼ食品なんだよ」 「だからってミイラ食べたいか?」 「中世のヨーロッパや日本では万能薬として珍重されたらしいが」 「?!」
「少しべたべたが過ぎるから、二人のこれからの為にも距離を置こうって、連絡も淡々と減ってね。その内に結婚してて子供までいてさ。なのに僕達はフリーズドライな関係だからって。本当にお湯で戻るのかな?」 「んー。どう、かな。……相手が元々妻子持ちで遊ばれてた可能性は黙ってた方がいいよね」
「好きな人と手を繋ぎたくても気後れしちゃうそんな時はハンドクリーム! これで汗もかさかさも分からない。しかも塗って冷えちゃったって口実までばっちり」 「分かるけど、そこまでして繋ぎたい?」 「繋ぎたいよ!」 「あ、うん」 「繋ぎたいよ!!」 「ならいっそ塗ってあげたら?」 「すけべ!」
「前の席の女子がさ、ハンドクリーム出し過ぎちゃったからお裾分けって塗りつけてくるんだ。毎回。そんなに難しいの?」 「今度その子が使う時、代わりに出してあげなさいよ」 「熟れてない俺が巧くできるとでも」 「熟れてないのが潤うんじゃないの」 「どういうことだよ」 「熟れたら分かるわよー」
「いがみ合う二人を握手で和解させます」 「形だけだな」 「そこで魔法を掛けます。握手した手が互いを縛って離れません」 「なんてことを」 「互いに相手を許せたら自然に離れますから」 「風呂も排泄も一緒。見届けたくも、られたくもない地獄だよ」 「なかなか素直になれない二人には好評なんです」
「いわゆる接近戦。サインなら書いてる間、特典とかのチケットなら規定時間の枚数分、推しとのひと時が過ごせるわけよ」 「握手会商法はどうかと思うところがある」 「商品特典だとそれは確かに」 「その点、テーマパークのヒーローやキャストのさすがの潔さよ」 「ブランディングを考えさせられるな」
「昔から何かに付けて絡んでくる奴がさ、その日はどういうわけか右手を差し出してきて」 「和解の兆し?」 「腕の角度から腕相撲ではなさそうだったから、合気技の握手落としを疑った。そこで俺は指相撲で応じて返り討ちにしたんだけど、結局あれは何だったんだろうな」 「何か普通に仲良さそうだな」