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さっくり

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検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
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2024年7月の記事一覧

沸き立つ響き

「花火や爆竹は当然として、屋台が出す音なんかもそうじゃないかな」 「太鼓、バグパイプ、アコーディオン」 「割れた音響の盆踊り」 「迷子の呼び出し」 「電飾煌めく山車の行進曲」 「イベントの客入れ、配信待機画面の曲もだな」 「サイレン。ものに依っては不謹慎だけど」 「祭囃子の裾野は広い」

愛しの賑わい

「祭だわっしょい! 血が騒ぐ」 「祭にだってしめやかもあれば、集合礼即解散なんてのもあるが」 「賑わいはあるだろう」 「炎上騒ぎなんて祭り上げられる方は堪ったもんじゃないぞ?」 「ネットは祟りへの恐れの意識が薄かろうな。ただ祀られる身としては、どの賑わいも眩しくて仕方ないんだよ」

ピアノの日

「七月六日はピアノの日なんだって」 「私は雨の日がピアノの日だったな」 「何で?」 「うち、貧乏で防音室なんて無かったからさ、周りを気にせず弾けるのが雨の日くらいしかなかったの」 「置ける広さがあってピアノが買えるなら貧乏ではないと思うの」 「え、そうなの?!」 「え、そうだよ?!」

趣味:ピアノ

「趣味がピアノって、どれくらい弾くの?」 「弾かないよ?」 「なら聞く方?」 「聞かないよ?」 「まさか作る方?」 「作らないよ?」 「じゃあ何をするのさ?」 「愛でるの。ピアノって、生き物みたいでかわいいでしょ。艶めく黒もいいけど、もふもふも鱗もメカもいいし、服を着せてもいいよね!」

呪いのピアノ

「呪いのピアノを知っているか?」 「弾くと不幸に見舞われる?」 「鍵盤が重くてまともな速さで弾けない」 「鈍い方かよ。どんな養成ギプスだ」 「だがそのピアノで熟達した指に耐えるピアノが無いんだ」 「悲劇の楽器破壊アーティストだな。確かにそれは呪いのピアノだ」 「弾くと不幸に見舞われる」

世界の奏者と奏者の世界

「蓋を開く。しばらく待つ。蓋を閉じる。繰り返すこと三回。時間にして四分三十三秒」 「硬めのカップうどん? お湯も入れずに途中で覗く?」 「ピアノで弾くとこう」 「弾いてないじゃん!」 「そう。そのざわめきを奏でる曲なんだ。つまり奏者は世界を奏でる」 「なら君は世界に演奏されてるの?」

連弾、危機一髪

「椅子一つを二人でシェアするこの狭さ。すぐ隣から伝わる相手の動き、気配、表情に温もり、呼吸が直に演奏に返るのが連弾でしょ? それを視聴覚だけの世界でしてもねえ?」 「……そうかしら」 「なっ、耳許で喋るなって! ……もう、バーチャルじゃなかったら」 「バーチャルじゃなかったら?」

ゆるカオス・マーケット

「バーチャルマーケット恐るべし」 「ブラックに聞こえてる体とかは交流用のアイテムだから」 「場所は?」 「ネット空間」 「ダークウェブか」 「普通のブラウザだし、リアル会場もあるよ。イメージキャラやアンバサダーも居るよ」 「ゆるキャラみたいな?」 「色々居るね」 「……ますます分からん」

ブラッキー・マーケット

「その市は何を取引しているんだい?」 「んー。……何でも?」 「何でも?」 「データなら。絵、音楽、映画、プログラム。それに服や体もか」 「人身売買?!」 「臓器もいけるかな。あと世界まるごとでも」 「何そのブラックマーケット」 「バーチャルマーケット。普通に有名企業も出展してるから」

バーチャル・マーケット

「百万人で賑わうマーケットがあるんだ」 「今や為替や有価証券みたいなトークンの市場も電子化されてディスプレイに相場が流れるだけになったというのに、あのリアルな活況が残っているとは」 「開かれて六年目なんだけど」 「まさか時代を逆行するだと?!」 「それもバーチャルの魅力ではあるよね」

うどんが降るなら

「雨だね」 「そうだね」 「あの雨がみんなうどんだったらどうだろう」 「湯切りですっ飛んだにしては量が多いね」 「流しうどん会場に竜巻が直撃したとかね」 「いや、空飛ぶうどん妖怪の仕業だよ」 「ぬるぬるべたべたでひやっとしてそうだ」 「生暖かいよりはいいさ」 「……雨だね」 「そうだね」

うどんに捏ねて

「うどん至上主義がそばを食べてる?!」 「うどん粉の麺類はみんなうどんだぞ。それにこれは二八そば。つまり八二うどんだ」 「なら十割そばは零割うどんか?」 「うむ。ついでに言うなら牛丼もうどんだ」 「ドーナツの穴を食べるような屁理屈だな」 「俺は生地よりも理屈を捏ねる方が得意なのだよ」

うどんサジェスチョン

「ちゅるりとした口当たり。もっちりした歯触り。ふわりと広がるお出汁の味わい。空かさず引き締めて飽きさせない薬味の香りに歯応え。そして適度に寂しさを残す弁えた喉越しは『もう一口』と唆す」 「いいなそれ。食べに行くか、ラーメン!」 「そっちかー」 「ん、パスタだったか?」 「そっちかぁ」

皿サラダうどんさらさら

「サラダうどんってあるでしょ」 「ヘルシーな気のする炭水化物ね」 「皿うどんってあるでしょ」 「皿に盛ったうどんね」 「サラダうどんを皿に盛ったら?」 「皿サラダうどん?」 「更にさらさらにしよう」 「さらさらな皿サラダうどん?」 「すらすら言うね」 「そこはさらさら言うねじゃないの?」