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さっくり

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検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
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2023年8月の記事一覧

和ませ! シリアスブレイカー

「心底呆れた!」 「こっちの台詞だ!」 「白熱した昼下がりの部室に俺推参だよー!」 「「?!」」 「その恋バナに混ぜてくれ」 「……心底呆れた」 「……こっちの台詞だよ」 「先輩、お蔭で助かりました」 「これでも和み系で売ってるんだよ。新部長」 「なら和み系では売れないかもです。部長」

並べて事も無き世の姿

「縁側で茶を啜る」 「やっぱり緑茶ですかね」 「猫の喧嘩に割って入る」 「威嚇がぴたりと止みますよね」 「立ち去ると徐に再開する喧嘩」 「あるある。ところで、あいつらは止めなくていいんですか?」 「犬も食わないいつも通りの痴話喧嘩。お茶のおかわり、いる?」 「でしたら、お言葉に甘えて」

大胆不敵のクライム・クルーズ

「一年生になったら、恋人百人できるかな」 「命知らずな。しかも一年。余程の軍師が要るな」 「軍師は百人で足りるかな」 「物量?!」 「百人でパーティするんだ。富士山頂で」 「もう石油王の貸し切り旅行だな。一人少ないのが不穏だが。けど軍師百人?」 「山に登るなら船頭は多い方がいいだろ?」

砂山トンネル効果

「砂遊びで山作るじゃん」 「懐かしの天地創造だ」 「山ができたらトンネル掘るじゃん」 「やるやる」 「逆側からも掘り進めて」 「居合わせた奴も加わって」 「開通して指が触れ合ってさ」 「友達になる」 「そう。でも誰だったんだろう?」 「その場限りなこともあるさ」 「俺しか居なかったのに?」

無常ループ

「山川草木悉有仏性って、あらゆる自然に仏性が有るんだよね?」 「うん」 「でも諸行無常なんでしょ? だと山川草木悉無仏性じゃん」 「諸行無常も無常だから諸行無無常だよ」 「なら諸行常じゃん」 「それも無常だから諸行無無常亦無常、つまり諸行無常なんだよ?」 「え、無限ループって怖くね?」

山深く響く傷

「いつもこう」 「いつもこう」 「ねえ聞いてる?」 「ねえ聞いてる?」 「もう最悪」 「もう最悪」 「私の方が無いわ」 「私の方が無いわ」 「ちょっとこっちの身にもなってよ。鸚鵡返しばっかでさ」 「こっちの身にもなってね? 散々同じ悲嘆のエコーからの不幸マウント。山彦じゃないんだからさ」

ある詐欺の果て

「炊煙の立たぬ自領を目の当たりにした王は民の餓えを知り、徴税を止めた」 「暴動起きないの?」 「起こる。民が富む一方で王宮は荒んだ。王は民の炊煙を喜び、免税を延長する」 「?!」 「暴動は徴税再開で起きた」 「!」 「押し掛けた民衆は進んで王宮を修理した」 「振り込めない詐欺の末路だ」

大嫌煙社会

「喫煙は隔離、線香の煙も減った。工場も機械も排煙が規制された大嫌煙社会。気儘な煙は噴煙に、湯煙くらいか?」 「燻製や演出では煙たがられてないんじゃない?」 「分煙が徹底されてると?」 「硝煙、土煙、血煙、煙幕。戦場は煙に溢れてるけど」 「分煙が煙を他人事にするんじゃないのは確かだな」

スモーキー・ルーム

「花火大会のお詫びに手持ち花火?」 「恩師の葬儀だぞ? 線香と焼香に燻されて。蚊取りはどこだっけ」 「この花火の中継さ、映り込んでるのあんたよね? 隣はどなた? 喪服デートとはいい趣味ね」 「煙草、……吸ってもいいかな?」 「煙に巻けるだなんて思わないでね?」 「ふぅ、煙になりてー」

ポップスクラッチ

「ホップスコッチ?」 「この図形で遊ぶ」 「けんけんぱ!」 「紀元前からあるそうだ」 「!」 「マルチプレイや石も使うとか」 「タイムアタックしかしたことないぞ。俺らに取っちゃ既に遊び方が失伝してるのか」 「なら実は失伝文字だったりな」 「先史グラフィティアートだったってのも悪くないな」

不慣れな未舗装恋路

「決戦の花火大会。勇んで決めた慣れない浴衣。意地で歩調を彼に合わせて見事靴擦れ。惨め恥ずかし背負われて会場離脱? 何そのベタなラブコメは。それから?」 「遠くで花火が上がって、彼の瞳にきらきら映って、そしたら目が合って」 「おお!」 「電話が鳴ってぶち壊し」 「ごめん。何か奢らせて」