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さっくり

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検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
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2022年9月の記事一覧

理不尽な問い

「この作品は何を謂おうとしているの?」 「何それ、作者の気持ちを答えよ? それ本人に訊けって思ってた昔から」 「本人が答えられない場合は?」 「出題者を慮れね。そのくらい察してよってのと同じ」 「忖度」 「つまり斟酌の裁量はこっちのもの。じゃあこの作品は何を謂ってる?」 「世界平和!」

勇み足

悔しかった。不本意だが認めた。あれほど腹を括ったはずだった。なのにここに来て足が竦む。言葉が出ない。先人はこれを踏み越えたのか。重い。怖い。かといってこのままでは不戦敗。それは駄目だ。散々覚悟は問うただろ! 「す、……すきやぁ、き好き?」 「え? まあうん」 告白の心得を問いたい。

金色の約束

「荷解きお疲れ様。これから私たちの新生活が始まるのね」 「あ、この瓶」 「そう。付き合う前、誕生日にくれた金平糖。中身は別物だけどね」 「ずっと持ってたんだ」 「はい、あーん。五十年後も二人でこうして食べたいね」 「ではなおさら末永く宜しくお願いします」 「こちらこそ幾久しくです」

億万貧者

「ここに億万長者ってあるんだけど、これは億万人も長者が居たってこと?」 「違うと思う」 「なら、億万の配下や土地を持った長者ってこと?」 「それも違う」 「じゃあ一体何の長者なのさ?」 「昔は億万が巨額を意味したんだって」 「え、ジュース一本二百兆だよ? 一億万じゃ何も買えないじゃん」

現金

「私も数えたし合ってるよ」 「人生で何回もない買い物、万一足りないなんてことになってみろ」 「心配性ね」 「俺はみっともない思いはしたくない」 「その入念さを掃除にも活かしてくれたらね。そのお金で買うものなら期待してもいいのかな?」 「恥を掻かない範囲でならね」 「体面かよ、現金な人」

成金曜日

「触れたものが金になる力を授かった王は、持て余した力を川一つ砂金塗れにして洗い流したんだって。私なら今日を金曜にして、すると明日は土曜なので優勝です」 「それきっと翌日も金曜日よ。その先もたぶん毎日が金曜日」 「やめて」 「どうせなら毎週黄金週間にしちゃえば」 「怠惰ね」 「心外ね」

金色の折り紙

「片付け苦手だから助かるよ」 「何これ折り紙? しかも金ばっか」 「あー、昔好きだったんだけどさ、金紙は勝手が違って巧く折れなくて。いつか見合う腕になったらって」 「結局折れず終い?」 「うん」 「……私は金紙じゃないぞ?」 「え?」 「ご飯、何奢ってもらおっかなー」 「お手柔らかに」

集まれ! 猫頭巾

「ドレスコード猫頭巾」 「天然お断りの猫被りの集まり?」 「気になって行ってみた」 「あれ猫被れたっけ?」 「猫耳フードで」 「なるほど? で、どうだった?」 「猫被り、火消装束、頭上に猫を据えた人」 「聞くまでも無くカオス。であんたは?」 「当然、借りてきた猫よ」 「訊くまでも無いか」

猫の九生

「うちの子どうやら名前がいっぱいあってさ」 「そして名前ごとに生活があると。猫に九生ありね」 「それって多重生活を謂うんだっけ?」 「どうかしら。ただそれぞれの生活を暴こうとしては駄目。名付け親ごとに猫との暮らしがあるから。その好奇心が猫を殺してしまうかも知れないから」 「怖いよ!」

収まりの良い結界

「あの」 「良い所に! ちょっと手伝ってよ。さっき落とし穴を見つけてさ、埋めに行くんだ。場所は判るよう線で囲んできた」 「?!」 「ところで猫は箱とか容器が好きだよね。収まりが良ければ模様でもいいとか。あれ、いつも一緒の猫耳さんは?」 「……」 「あーこれは、先に助けが要るみたい?」

略奪愛河

「駅でばったりよ。あいつ仕事だって言ったくせに、知らない女とデートしてんの!」 「わお」 「で、あいつが私を知らない女呼ばわり」 「無いわー」 「嫌いな女の相手だったから奪ってやっただけだし、大して好みでもないし、未練は無いんだけど」 「じゃあ何で泣いてんの」 「あー、……何でかなぁ」

ゲーマーの鑑

「新しい挑戦を始めた」 「怪我はいいの?」 「問題ない」 「タイトルは?」 「『リアル』。選択肢無限大、アクティブプレイヤー七十億の伝説のゲーム」 「強いな煽り文句。で、今度は何を縛ったの?」 「ステータス異常回復リアルタイムアタック」 「療養まで競技にするなんて筋金入りのゲーマーだ」

イナゴの恩返し~悪名運用篇

「じゃあイナゴはとばっちりなの?」 「群生相変異しないから」 「イナゴが庇った可能性は?」 「汚名に適う恩に心当たりが?」 「身代わりに食べられた恩」 「飛蝗は不味いらしいから」 「それで絶滅回避、そして佃煮へ」 「結局食べられる運命」 「私が美味しく頂く運命!」 「好きねー」 「うん!」

夢のドリンクバー最強ブレンド

「ドリンクバー最強ブレンド」 「一度は夢見るね」 「混ぜるな危険」 「身も蓋もない」 「好みは十人十色」 「あーそういう」 「積層は良い。味に障らず映える」 「ここで混ぜない道」 「混ぜ加減こそ肝」 「繊細さが必須だ」 「素人にはお勧めできない」 「まあ色んな意味でメンタル強くないとだね」