いわゆるグレイヘア問題
体調を崩してから、白髪が一気にドバーッと増えた。
もちろん自然な加齢のせいもあるし、両親は二人とも白髪頭で遺伝もあるだろうしで、別に驚くことは無いのだけど、いつの間にか増殖していた自分の白髪を改めて見た時、やっぱりびっくりしてしまったし、それなりに落ち込んだ。だって、苦しい日々を何とか過ごしてきて、更に老け込んだ見た目のおまけ付きとは悲しすぎる。むしろ頑張ったご褒美に若返らせて欲しいぐらいなのに。
半分寝たきりの頃はとにかく毎日生きることに精一杯で化粧やら服装やら見た目にかまってる場合ではなかったけれど、外出が出来るようになってくると、身だしなみが気になってくる。そう考えると、自分はずいぶん回復したものだなとしみじみ思う。
さて、無視できないまでに増えてきた白髪をどうするのかについて真剣に考えたきっかけは、スペイン巡礼に行くと決めたことだ(こんな体調で行けるわけ無いとかそんなことは関係なくて、先ずは決めることが重要なのだ)。めちゃくちゃ具体的に持ち物とか旅程を考えているうちに、「私の体力やと多分40日はかかりそう…あ〜そしたら白髪伸びてくるやろな…ん?巡礼中に白髪のこと考えるん…?それこそ煩悩!そんなこと考えながら歩きたくないし…この問題片付けたい」となったわけである。
いろんな考えが頭をぐるぐるしたけれど、最終的に私は「楽しみながら白髪と付き合う」ことに決めた。隠すんじゃなくていい感じ(ってどんな?)に活かしたい。
理由は色々有るけれど、自分がこれからどういう生き方をしたいか?って考えた時に、今のそのまんまの自分で堂々としていたいっていうのと、病を経てかなり少なくなってしまった自分のエネルギーと人生の残り時間を、自分にとって本当に大切な事のために使いたいから、っていうのがメインの理由。
ちなみに、私は今の自分が一番「良い」と思っている。つまり死ぬ直前が自分史上最高の自分になる。そして、他の皆も同じだと思っている。なぜかというと今が人生経験が一番豊かな瞬間だから。それなのに白髪が増えてきている今を嫌がるのは矛盾しているのでは…?
大体、何にも悪いことしていないのに、白髪を嫌うなんて可哀想でもある。頑張って生きてきた私の一部分、つまり同士なのだし。嫌わずにむしろ好きになってあげたい。例え好きになれなくても、存在は許してあげたい。
「白髪有ってよし!勿論、無くてもよし!」
そう思えた時、肩の荷が下りた気がした。下ろしてみて初めて荷物が意外に重かったことに気づく。
そして、毎日鏡を見ていると、だんだん見慣れてきた。ちょっと拍子抜けする。
以下、いわゆる巷のグレイヘアへの否定的意見に関して、私なりの考察。
①「白髪が有ると老けて見える」
→白髪=老いの象徴と捉えられることは否めないので、その通りだなと思う。但し、染めていても染め方やお手入れが悪かったりするとやはり老けて見える。私にとってはゴワゴワに傷んだ髪や白髪プリン状態になることの方が辛い。
というか、そもそも何のために・誰のために自分を若く見せたいの?という疑問が湧いてくる。
②「旦那さんが可哀想」
→これを初め見聞きした時、頭が???となったが、要するにこれを言った本人の夫及び周りの男性は若い女性が好きであるからあなたの夫もきっとそうであろう、よって若く見せていないと嫌われるかもよ、という意味とみた。もしこれを誰かに言われたら旦那さんへの侮辱罪で怒って良し、ではなかろうか。と同時に、発言者はずっと若くいたい・いなければならない、という考えに縛られて、しんどい努力を続けているかもしれず、だとしたらちょっと哀しくもなる。とはいえ、若い女性が好きな男性が多いのは事実で、それは動物の本能なのだから仕方ないのかも。でも、人生のパートナーには人間性を含めた魅力を認めて貰いたいなぁ。
③「子供が可哀想」
→子供は正直で残酷だ。若さが素晴らしくて老いは醜く憎むべきものだといつの間に学んだのだろうか?それとも本能的に知っているのだろうか。子どもの素直な気持ちを考えると、そうだよね、と思う。でも、その子はきっとこれから見た目や若さと老いの問題に振り回されて悩んでいくことになりそうな気がする。私達の多くがそうしてきたように。
④「美容師さんに「まだ早いよ」と止められた」
→美容師的にはそうだろうなと思う。カラーは利益率が良いと聞いた(美容室によるのかな?)。そして大抵の美容師の考える「美しさ」や「おしゃれ」に白髪は1ミリも入っていない。これからもっと幅広い意味での「美しさ」を認めて、それを叶えてくれる美容師さんが増えることを願います。しかし、白髪面積が増えてからグレイヘアに移行するのはなかなかに大変そうなので、早めに移行してしまうのも良いのでは?
⑤「ごま塩頭は汚く見える」
→黒に白が混じるとコントラストが大きくてギラギラして見えてしまうから?でも汚いとはこれ如何に。失礼な話と思ってしまうけれど、どう見えるかは人それぞれなので、仕方がない。地毛なんだから自分に馴染まないわけはないと思うのだけど…
④に繋がるけど、何で真っ白ならキレイで、黒白混じったグレーはそうじゃないと思えてしまうのだろう??そもそもグレーっておしゃれで素敵な色だと思うんだけどなぁ。
⑥「美人であればグレイヘアでも素敵」
→これまた仰るとおりなんだけども、それだと普通の人は染めたとて普通てことになるし、もうそれ言いだしたら全てにおいてそうなるよね、って話で…
否定的意見に納得できる部分は有りつつも、私はやっぱり、白髪を無いことにするのではなくて、有ることを認めて活かしてあげたいなという結論に至った。
ともあれ、何が良いと思うかは人それぞれだし、染めても染めなくても、誰かに迷惑がかかるわけではないので、自分のやりたいようにすればよいと思う。(もし迷惑だという人がいればその人との関わり方を考え直したほうが良さそうな)
要は、自分の心に正直に、そして自分を好きでいられることが一番大切じゃないかな。
単なる見た目の話だけではなくて、実は人の本質を深くえぐる白髪問題。
ま、こんなことに悩むのもあと十年やそこらの話だろうけれども!
いろんなことを軽やかに手放して、楽しく明るくおばあちゃんになっていきたいな。