餃子が包んでいるものは
「固め濃いめ多めで、ライスもお願いします」
食券を定員さんに渡しながら席に着く。
家系ラーメンを食べる時はいつもこの組み合わせだ。
隣の席はチャーシュー丼
チャーシュー丼も頼みたかったが、なるべく安くお腹を満たすために”ライス無料”に喰らいつく。何度ライス無料とカッパ漬けにお腹お満たしてもらったことか。
そういえば中学生の頃はみなんでラーメンを食べに行って替え玉でお腹満たしていた。
上京してからは”替え玉無料”のお店はなかなか見かけない。
昔の方が物価が安かった恩恵なのか、過疎地域で生き残るためのサービスだったのか。
その頃からチャーシュー丼や餃子も一緒に食べてる人は羨ましかった。
大人になったら特製ラーメンとチャーシュー丼をお腹いっぱい食べるという夢があったがいまだにラーメン屋でチャーシュー丼は頼めない。無料のライスにラーメンのチャーシューを一枚バウンドさせて食べる。
餃子はラーメンと一緒に食べずに、お酒と一緒に楽しむようになった。
幼馴染との旅行中たまたま入った餃子屋。この地域では有名なチェーン店。焼き餃子は羽付でパリパリ最高。チェーン店だから美味しいのかチェーン店なのに美味しいのか。
その答えは出ていないが、僕はこの先この街が好きだとおススメし続ける理由にご飯のおいしさがある。
餃子以外にもこの土地の名物焼きうんどんも注文した。この土地の味付けが自分には合っているんだろう。
そう気がついたのは上京したての頃時間がなくてサクッと昼食を取るために入った立ち食い蕎麦屋で"つゆ"の違いでこんなにも料理として違うのかと圧倒されてからだ。
食文化の違いを知りさらにこの土地が好きになった。
あんなに羨ましかった餃子をお酒と一緒に楽しむようになり、あんなに食べていたラーメンが飲んだ後の締めになり、チャーシュー丼にはまだ手が出せず。
お酒の場で食べる機会が増えた餃子だが、家では冷凍餃子が毎日スタンバイしている。
餃子が好きすぎてYoutubeに毎日餃子を食べる動画をアップしているほどの餃子マニアというわけではないが、仕事終わりに疲れ果てた状態でも焼くだけで簡単に調理できる冷凍餃子は上京した社会人には必須だ。
冷凍餃子はオールウェイズアベレージの高い味を提供してくれているから
本当に感謝している。
冷凍餃子→レトルトパスタ→レトルトカレーを繰り返し、電車に揺られ荒れ狂う社会を生き延びていると考えると、とても効率のいい生き物だなと思う。無理やりポジティブに考える、こうでもしないとモチベーションが保てない。
平日夜は12個入りの冷凍餃子を4個だけ焼き、残りは別の日に食べる。
1個の餃子にタレと柚子胡椒を多めにつけて、2口に分けて胃に流し込む
白米は大盛りだ。もちろん家でライスはおかわりし放題だが、自分の財布がおかわりを許さない。
都会で暮らしていくには生活費と戦わなければならない。
高い家賃、上がる光熱費。一口一口を噛み締めながら食べる餃子。
白米にかき消されそうな餃子の味を探すように食べることで、餃子のありがたみに感謝する。
これが都会で暮らす平凡な社会人の丁寧な暮らしだ。
先週も同じような暮らしをしていた気がして周りを見渡すが部屋の中からも何も変化を感じられない、カーテンは朝から閉めたままだ。今日が何曜日かもわからなくなるような、変化なのない平凡な暮らし。
家でも仕事の通知が来るスマホ。何曜日かわからない上に、今が業務中なのかプライベートなのかもわからなくなる毎日。
気持ちを整えスマホを見ると、中学生の頃一緒にラーメンで替え玉の回数を競って食べていた幼馴染からLINEが
「6月に結婚式を挙げるよ!」転職を機に上京をして離れ離れになっていたが、帰省する予定ができた。
「めでたいな!おめでとう!!!」
結婚のスピーチの任された場合はラーメンを一緒に食べた話をしよう。
話が盛り上がる。いつの間にか電話をしていたこの時間もいつかは懐かしく感じるんだろう。
スマホから聞こえるグラスがぶつかる音。仲睦まじい夫婦。
餃子を追加で2個焼き始める俺。