見出し画像

AIにはできない仕事。賞状に文字を書く筆耕の仕事の面白さとは?

筆耕(ひっこう)という仕事をご存知ですか? 賞状や招待状、のし袋に毛筆で文字を清書する仕事です。
急速なAIの進化で、多くの仕事がAIに奪われるかもしれないとささやかれるなか、AIにはできない仕事のひとつとして注目されています。表彰状や卒業証書など、人生の特別な場面で求められるこの技術は、AIには真似できない独自の価値があるからです。
この記事では、筆耕がAIに代替できない理由を紹介するとともに、2031年に創業100年を迎える東京新富町の紙製品メーカー・山櫻の銀座賞状センターで働く筆耕士にインタビューした内容もご紹介します。


賞状には欠かせない筆耕とは?

まず筆耕とは、どんな仕事なのか、どんな歴史をもつのかについて解説します。

筆耕とは、フォーマルな場面で使われる手書き文字

筆耕(ひっこう)とは、毛筆によって書かれた手書きの文字を意味しています。筆耕と聞いて、卒業証書に達筆で書かれた自分の名前を思い出す人も少なくないのではないでしょうか? 
デジタル全盛の現代でも、卒業式、表彰式、結婚式などのお祝いごとなど、人生のなかで「ここぞ」という場面で使われています。

筆耕のルーツは、奈良時代の写経から

筆耕のルーツは、はるか奈良時代にまでさかのぼります。奈良時代には、「仏教の経典を書き写す」仕事がありました。その仕事に従事する写経生(しゃきょうしょう)は、読みやすく美しい文字を書くことに長けていたそうです。
江戸時代に入ると木版印刷が生まれ、出版物が流通するようになります。この時期に版下文字の書き手が生まれ、その「版下文字の書き手」を筆耕と呼ぶようになりました。
ちなみにこの言葉の語源は、「筆耕硯田(ひっこうけんでん)」です。これは「筆で、硯(すずり)の田を耕す」という意味で、文筆家を意味しています。

筆耕がAIに奪われない仕事と言われる理由は?

ここからは、筆耕がAIに奪われない仕事と言われる理由を解説します。

筆耕は、日本の文化に根付いているから

これまでお話したように筆耕の歴史は古く、筆文字は正式な書体として評価されてきました。書道や美術的な要素を取り入れた筆耕は、日本の文化に根付いているのです。
ここで、筆耕が求められる場面をリストアップしてみましょう。

● 卒業証書や結婚式の招待状
● 賞状や感謝状
● 選挙での宛名書き
● 祝辞や弔辞
● 式典での胸章

21世紀になったいまも、こうした人生の大事な場面では、手書きにしかない存在感が欠かせないものとなっています。

筆耕には、人間ならではの感性が求められるから

AIが苦手な分野とは、人の感情を推し量りながら臨機応変に対応することです。
筆耕は単なる文字を書く作業ではなく、場面や目的に応じて適切な表現を選択する必要があります。この判断には、人間ならではの感性が求められているのです。
手書きの文字には、印刷やデジタルでは表現できない温かみや個性があります。デジタルの文字と比べると、人間の手書き文字は、その場にふさわしい雰囲気や受け取る人への思いを込めることができます。

プロフェッショナルに聞く。筆耕の仕事とは?

ここからは、紙製品メーカー・山櫻の銀座賞状センターで従事する筆耕士にインタビューした内容を一問一答形式でご紹介します。

【Q】筆耕の仕事とはどのようなものか?

【A】一般企業様、学校、ホテル、一般消費者などのお客様から依頼を受け、感謝状や表彰状などの賞状用紙へ毛筆で文字を書きます。
賞状用紙だけでなく、封筒や招待状への宛名書きや、胸章のリボンタレ、式次第や看板などにも筆耕は役立っています。
銀座賞状センターでは、カリグラフィー(伝統的な表現による手書き欧文)にも対応しています。

【Q】筆耕の仕事をするために必要な資格はあるか?

【A】筆耕の仕事に、特別な資格は不要です。この文字は、書道の有段者だからといって書けるものでもないからです。
筆耕に関連する資格としては、賞状書士や賞状技法士などがありますが、実際は「お客様がご納得頂ける技術レベルで書けているか」という点がポイントです。

【Q】筆耕士は、何年ぐらいでプロフェッショナルになれるのか?

【A】上手な方であれば2~3年でそれなりに書ける方もいるようです。当社で担当する筆耕士のなかには、20~30年程度書き続けている方もおります。
いずれも個人の技量によるところが大きい仕事で、書けば書くほど技術力が上がると感じています。

【Q】書くときに、心がけていることは?

【A】技術的な心がけとしては、「楷書をまっすぐ丁寧に書く」ことが第一です。
精神的な心がけとしては、賞状は人から人へ贈られる大事なものですから、贈る方の気持ちや受け取る方の喜びなどを考えながら、常に心を込めて書き上げることを意識しております。

「AIにはできない仕事。賞状に文字を書く筆耕の仕事の面白さとは?」まとめ

●筆耕とは?
・フォーマルな場面で使われる手書き文字
・ルーツは、奈良時代の写経から
●筆耕がAIに奪われない仕事と言われる理由は?
・筆耕は、日本の文化に根付いているから
・筆耕には、人間ならではの感性が求められるから

山櫻の銀座賞状センターでは、筆耕のプロフェッショナルが、手書き文字で卒業式や結婚式や表彰式など、人生における特別な場面を演出します。
詳しくは、こちら

銀座賞状センターと連動したECサイトでの賞状印刷・筆耕のご依頼はこちら


この記事が参加している募集