信頼関係を築く
デパートでお歳暮の対面受注のアルバイトをしていた時のお話です。
私がこの仕事を選んだのは、カウンセラー養成講座で学んだ「傾聴」を活かせる場だと思ったからでした。
夕方頃、お客様もだいぶ少なくなってきて、ピークの時は100人を超える待ちも、10人以下くらいになっていました。
受注対応をしながら、ふと待ち席のほうへ目をやると、一人男性のお客様が怒った顔でやって来て、番号札を取ると待ち席に座られました。ひどく怒っている様子で、顔に思いっきり「自分は今とても不愉快だ!」と描いてあるようでした。
(嫌だなぁ。どうかどうか当たりませんように…)と思いながら接客を終え、次のお客様を迎える準備ができると、呼び出し担当のスタッフに向かって立ち上がり、「お願いします」と手をあげました。
「○○番のカードをお持ちのお客様」との呼び出しに、その男性のお客様が私のブースへ向かって来ようとされています。
(ガーン!どうしようどうしよう…なぜだかわからないけど怒っているし…。)
「何かございましたか?」と聞くべきかと思いましたが、何かひとつをきっかけに今にも怒りが爆発してしまいそうな感じです。下手に聞いて、「おたくに話す筋合いはない!」なんて爆発への最後の一押しをしてしまうわけにはいかない…。
緊張しながらも、とりあえず気づいてないふりをして平常通り笑顔で対応することにしました。
その男性は、ビールとジュースの詰め合わせを送ると決めていらっしゃいました。それでも、いくつかある詰め合わせのセットからなかなか選ぶことができません。
送り先の家族みんなに喜んで欲しいから、ビール好きのお父さんにはビールを、そのお子さんたちにも喜んで欲しいからジュースをと決めて来たものの、自分が思い描いていた銘柄の組み合わせが無かったのです。
「今CMでやっている一番新しいビールを送ってあげたかったのに、なんでジュースとの組み合わせがないのか?」
「そうですね。今一番新しいのを差し上げたいですよね。」
「せっかく送るから、やっぱり喜んでもらいたいんだよね。」
「そうですね。喜んでいただきたいですよね。」
そんなふうに、ミスしないように、怒らせないように、と心の中で願いながら、お客様のお話から気持ちを汲み取りつつ対応し続けました。
ようやく商品も決まり、会計も終えて最後にお控えをお渡しした時に「君に言ってもしょうがないのだけれど…」とお話くださいました。前の売り場で嫌な思いをされたそうです。それで機嫌が悪かったのだと言って、ちょっとはにかんだ笑顔を見せて、会場をあとにされました。
最後のご様子にホッとしました。この時は、お客様の怒りを爆発させてはいけないとの一心でした。今振り返ってみると、私がお客様の怒りに気付いていないふりをしながら、ひたすらお客様のお話を傾聴し続けたことが、信頼関係を築くことにつながっていたのだと気づきました。だから最後に、私にご自身の気持ちを素直にお話くださったのだと思いました。ただの受注業務だと言ってしまえばそれまでですが、傾聴が活かされお客様も私自身も心地よく過ごすために、傾聴の姿勢が活かされるその瞬間は楽しく嬉しい心からの笑顔になれる瞬間であったと振り返り思います。
Photo by RitaE
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