長男との出会い

子供を持つことにとても勇気が必要だった。

何よりも仕事のことだったと思う。そして、旦那の覚悟。絶対に育児、家事に参加させなければならなかった。これまでのように、末っ子根性では駄目であることを滾々と伝え、子供を持つことを承諾した。

しかし、持つといってもすぐにはできず、あれよあれよと1年。1か月、1か月いつも勝負な気持ちで、ダメだった時の落胆は大きかった。

それでも、不妊治療を続ける方からすると恵まれた環境にあったと思う。きっかけは、戸建ての購入をしたことからのような気がする。きちんとした住処を獲得し、落ち着いたころ、奴はやってきた。

産婦人科への定期的な通院、母子手帳、マタニティグッズ、あらゆるものが新鮮で、ワクワクしていた。

予定日より1週間ほど過ぎた夜中、珍しく目が覚めてトイレに行った。そこで出会う、出血。まだ様子をみていいものなのかどうか、判断は全く付かないので、とりあえず病院に電話してみる。すると、念のため来てくださいと。

おー、これからまた新たなステージだ!!面白い。と感じつつ、夢の中の旦那を叩き起こす。そして二人で病院に。

結果、まだ子宮口は全然開いてないし、おしるし程度のものと。しかし、なにか感じないかと言われ、そー言われてみれば、じんわりと定期的に感じるものはあった。でも、この数時間でなにか起こる様子はなく、先生が来るまでのんびり過ごし、旦那はいったん帰った。

医師が来てからは、いろいろと動き回ったりして、陣痛を促してみるものの、かなり微弱なので、促進剤を使用してくこととなった。

陣痛はかなりのものと聞くが、想像が付かないので、ここでも少しワクワクする。しかし、昼を過ぎても、夕方を過ぎても、余裕で過ごせるくらいの痛み。夕食過ぎ、少し波に乗って痛みをきちんと感じるようになったけど、夜は点滴を外して過ごした。このまま、陣痛が自然に乗ってくるといいね、と助産師に声を掛けられ、夜が明ける。

2日目の朝。担当助産師が、促進剤を使いながらも、足を温めたりなど様々なことをして陣痛を促すも子宮口もなかなか開いていかない。しかし、昼過ぎからは痛みは苦痛を感じるほどとなり、いつ終わるのか・・・ということばかり考えていた。結局、痛いばかりで、この日も促進剤を打ち切り、夜の時間に突入。

ここから、12時間の気が遠くなる戦いだった。


6分間隔で襲ってくる陣痛は、かなりのもの。声を出さずにはいられないほど。それでも産まれてくる気配はないらしい。時計の針は進まないけれど、6分後はすぐにやってきて、5分くらい経過すると痛みが徐々に襲ってくる。たまたま夜勤の見回り助産師さんがいいタイミングで来てくれると、さすってくれたりした。頼みの旦那は、付きそうも、夜は睡魔に襲われている。私の痛みに耐える声を聞いて、はっと、目を覚ますときもあれば、起きなきゃと思う反面、睡魔には勝てず、寝言を言っている。

時計は見れども進まない。助産師さんは励まそうとして

「赤ちゃん、元気だから。頑張ってね。痛いよねー」とさすりながらも声をかけてくれる。

しかし、限界よろしくの私は、もうこの言葉に、赤ちゃん元気でよかった、なんて思えなかった。

あー、なんなら、元気無くなれば、帝王切開で取り出してもらって、この痛みから解放されるかしら・・・

なんて、あらぬことまで考えていた。

そんなことを考えても時間はまだ午前1時・・・長い。

医師が来るまでまだ・・・・えー、何時間。。。気が遠くなる。なんて思っていると、陣痛が・・・くーーーーっ

午前7時、朝を迎え、助産師に思い切って聞いてみる。

「あのー、帝王切開という方法はありますか?」と。

助産師さんも、約3日もここにいる私を思い、「もうすぐ先生来るから、聞いてきますね」と否定はしなかった。気休めだろうけど。

でもまだ7時。あと、2時間は医師は来ないか。。。なんて思って過ごしていると、思ったよりも早く医師が顔を出してくれた。

しかし、子宮口はまだ完全には開いていない。あーん、結局またあの定期的な激しい痛みと今日も戦うのか、と落胆。

なんて思っている間に、医師からは、「大丈夫、今日出せるから、頑張ろう」と言ってもらう。本当に?終わる?この激痛の時間。

そして、恐怖となる点滴の時間。それでもやっぱり点滴をして促して。いやー、きつい。なんて思っている間にいろいろと進んでいく。あら、これまでと状況は違う。いきんで、なんて言われている。もう、わからない。パニックだ!!!でも思うように出てこない、私からしたら終わらない。

本当に、人間が出てくるのだろうかと半信半疑にもなってくる。

医師は「ママ疲れてるから、ちょっとお手伝いするね」と会陰切開に吸引と様々なことが行われた。しかし、音はすれど当事者の私にはまったく見えない世界で、何がなんだか。

すると、最後のいきんでと同時に、するっと何かが抜けた。

おー、終わったーー。これが産まれた、という瞬間か。と思ったのもつかの間。あら?赤ちゃんの泣き声ってやつは??ん??

「おぎゃー」

おーー、安心。後の処置をしてもらい、赤ちゃんとの感動の対面!!!

えっ?産まれたての赤ちゃんってブスー。羊水の中にいたためか、なんだか顔がむくんでる。そして、髪の毛がしっかりとある。

あらら?どこで感動するんだ?ドラマではここのはずだけど。

まー、いーや。おわった、終わった、オワッター!!!陣痛さよならー。


日曜日のとてもよく晴れた日に、長男は無事に産まれてきた。

子供が大好きな旦那は、3日間付き合い、泥棒みたいな顔をして赤ちゃんを大事そうに抱いている。かわいくて仕方ないらしい。

それぞれの両親も駆けつけ、抱っこしてもらい、幸せな奴。

その日の夕方、ママはこれまた人生初の貧血を起こし倒れてしまう。

人を産むって本当に大変です。命がけとは大げさじゃない。マジで命がけ。


そこからは激動の育児の始まりですが、出会いはなかなかの長丁場に、感動なしの自分が面白かった。

長男よ、無事に産まれてきてくれてありがとう。

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