
観察する女-再会⑤ 性欲処理に利用される私たち
静かな降伏
薄暗い寝室で、彼女の指先がブラウスのボタンに触れる。
1つずつ外すその仕草には、いつもの支配的な色は見えない。
むしろ儀式のような厳かさがあった。
「二人も...ね?」
その言葉には強制も命令もない。
ただの提案。
それでも、私と美咲の心臓は早鐘を打っていた。
窓からは、夕暮れの光が差し込んでいる。
まだ、やめることはできる。
服を着たまま立ち去ることは、いくらでも可能なはず。
そう自分に言い聞かせながら、私の指は自分のブラウスに伸びていた。
「ゆっくりでいいのよ」
彼女の声が、心を溶かしていく。
白いブラウスが、彼女の肩から滑り落ちる様子に、目が釘付けになる。
美咲の吐息が聞こえる。
「美咲さんも...」
名前を呼ばれた親友が、小さく震える。
でも、その手は既にブラウスのボタンに掛かっていた。
「本当に...いいの?」
私の声が、掠れる。
自分に問いかけているのか、美咲に問いかけているのか、もう分からない。
答える代わりに、美咲の指がゆっくりとボタンを外し始める。
その動きに、私も釘付けになる。
普段の美咲からは想像もつかない、艶めかしい仕草。
「すごく、素敵」
彼女の声が、蜜のように甘く響く。
白いブラウスの下から覗く肌の色に、目が眩む。
私の指も、もう動き始めていた。
自分の意思なのか、誰かに操られているのか。
もう、その区別さえつかない。
布地が肌を撫でる音が、部屋の中を満たしていく。
三人の乱れた呼吸が重なり、官能的な雰囲気を作り出していく。
それは現実でありながら、どこか夢のような感覚。
「まだ...」
美咲の声が震える。
「逃げられる?」
私が言葉を継ぐ。
彼女は微笑むだけ。
その笑みには、既に答えを知っているという確信が宿っていた。
そう、逃げられるのに、私たちは逃げない。
むしろ、自ら快感の深みへと落ちていこうとしている。
白いブラウスが、三人の肩から滑り落ちていく。
それは、日常から非日常への一歩。
理性から解放への架け橋。
そして身につけていた物全てが剥がれ落ち、一糸まとわぬ3人の姿が現れる。
「きれい...」
彼女の言葉に、私たちの頬が熱を帯びる。
羞恥と期待が入り混じった感情が、体を震わせる。
窓の外では、夕陽が沈もうとしていた。
日常という光が消えていくのと同じように、私たちの理性も、少しずつ快感の闇の中へと溶けていく。
「自分で選んで」
その言葉に、背筋が震える。
そう、これは全て自分たちの選択。
誰にも強制されていない。
だからこそ、より強い昂りが、体を支配していく。
布地が床に落ちる音。
吐息が漏れる音。
心臓が高鳴る音。
全てが混ざり合って、私たちを取り返しのつかない快感の底へと誘っていく。
そして私たちは、自らの意思で、その誘いに従っていた。
それが危険な道だと知りながら。
いや、知っているからこそ。
夕陽は完全に沈み、部屋は深い闇に包まれ始めていた。
でも、もう怖くはない。
この闇の中で、私たちは新たな自分を見つけることになるのだから。