見出し画像

大人

 これまで、初めて訪ねる美容院やバーでは、「学生さんですか?」「何年生ですか?」と聞かれていた。

 ところが、ここ1~2年くらいで「何のお仕事をされてますか?」と聞かれることがほとんどになった。

 「丸ビルOLとして、丸の内の街並みを闊歩しています。あとサディストです。」と言いたいところではあるが、実際はまだ学生なので「まだ学生です」と言う。(丸の内OLにはならない)

 ともかく、身体の成長具合から、初対面の人に大人だと判断されるようになってきたらしい。

 大学入学以降のコロナ禍や大学生活、そして二度の就職活動中では、「子供のままでいたいのか、大人になるべきなのか」ということを本当に何度も考えていた。

 しかし、自分の意志や感情とは関係なしに、大人というステージは自動的にやってくる。

 あたしンちグラグラゲームが一瞬で片付くくらいに偏ってしまった今までの思考回路では、これがどうしようもなく許せなかった。

 それが、今は許せるようになりつつある。

 だって、別に特段おかしなことではないのだ。これまでの成長段階においても、自分の精神的な部分ではなく年齢という物差しで学校が変わり、映画館の料金も変わってきた。

 Instgramを開くと、一足先に社会人となった仲間たちの生活が垣間見える。

 毎週末に恋人とのデートがあるため、平日の仕事を頑張れると言う人。

 1年目にして有給をふんだんに使い、全国各地に旅行する人。

 学生時代では手の届かない値段の機材を購入し、趣味に取り組む人。

 自分の意志や感情と関係なしに大人というステージがやってくるのなら、せめて彼らのようにそのステージに登ったことで新たに楽しめる環境にしたい。

 頭の中のあたしンちグラグラゲームが水平に近づくにつれ、初対面の美容師さんやバーテンダーさんとも少しずつお話しできるようになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?