四丁目の旅路
夜、時々散歩にでかける。
恋人は冬以外はずっとはいているサンダルで、私は歩きやすい白のスニーカーで。
恋人と出会って私は夜の住宅地が好きになった。
二人で沢山歩く。
暗くて静かで、家からもれる灯りがきれいだ。
暗さと静けさが、どこか旅しているような気分をくれる。
家が美しく見えるのは絶対に夜だ。
月灯りや街灯に照されている家は、すべからず美しい。
窓灯りがもれている家なんかは、特に美しい。
屋根に掛かる木々の枝々も、玄関脇の三輪車も、じっと、静かに美しい。
なんでだろう、夜の住宅地には、しみじみとしたなんとも言えない美しさがあるのだ。
静かに幸せな夜の気配。
私は大好きだ。
だが、私は知ってもいる。
この静かな美しさは、一人だとちょっと心細さも呼び起こす種類のものだと。早く帰りたいっと思う種類の。
ちらりと横を見上げると、恋人のすべらかな頬。
私は安心して、またしみじみとした美しさにため息をつく。
#旅する日本語 ♯心細し
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