さよなら烏の濡れ羽色
規則の厳しい短大を卒業し校則から解放された私。
お洒落にも憧れがあった。
ある日 ふとした事で姉と口論になった。
前後は全く覚えてないが その時放たれた言葉
「烏の濡れ羽色」がパワーワードとなり突き刺さった。
今になると 褒め言葉にしか聴こえない しっとり艶々な黒髪。しかしその時は悔しく疎ましく私は髪色を変える決心をした。
とはいえ美容院に行くまでの勇気は無く
セルフカラーを選んだ。
当時はまだドラッグストアがあちこちに無い時代。
スーパーの僅かな種類から選ぶ。
液体タイプのカラーは明るいブラウン。
1剤と2剤をシェイク 意気揚々と振りかける。
やったぜ明るい髪色! さよなら烏の濡れ羽色!
放置時間を終えドキドキしながら流す。
髪色が明るくなるだけでこんなに嬉しくなるなんて。
「ん?」
「ん?ん?ん?」
鏡に映る私はいつもとなんら変わらない。
真っ黒 艶々太くて硬い私の髪は
全く化学反応を受け付けていなかった。
微塵も明るくなっていない姿に呆然とした。
あの頃は 明るい色にするには1度ブリーチして。
などと言う知識も無い。
私の初セルフカラーは失敗に終わった。
残ったボトルを当時高校生だった弟に
「使う?」と渡した。
弟も私の無変化状態を見て面白半分に振りかける。
髪質が柔らかく細い弟は同じ染液で
あっという間に明るい金髪に。
髪質、髪色でこうも変化があるのも驚き
羨ましくもあった。
次の日高校で しこたま叱られたのは今や鉄板ネタ。