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石鹸物語

あざみという名前の少女真夏の火まといつつ前腕暗くつつむ
変えたいのは必然により過去のみゆえ本気でタイムマシンの開発

夜の(どらいゔ銀影の)なか

むらさきのよろこびつちにはぐくまれいま百日紅の若木さかせる
気がつけば私まざこんあしたあるまたはあしたない生涯もない

王国

火のように熱いひかりに浮かぶ花溶けはじめたらくずれる王国
王国が割れた王妃は永遠に背中のひとよ王は死ねない

人類のひややかな目に刺されても日傘をもちいる地方都市にて
五月朝みたいな夏の夜を深みききすぎた冷房に驚ろく

冷血人間

生きることは死ぬこと薔薇を蝕みゆくものみな褪せる季節のいろに
一生はひとつの椅子取りゲームゆえかならずだれかがやぶれほろびる

一生なんて一瞬でたくさん

砂漠では滴った水はたちどころに灼けた砂に消え「愛」かと涸れる
溶けまざるいろとひかりと巨大さの空のもと毒も銃もなく生きる

2020年8月22日

重力で堕ちて平面に撃たれる雲窓外はみずの魔物の支配
今夜から雷雨はとどろきあすひとひ濡らしつづける水府のみずを

気まぐれに未来を回想

この世界に自分は関係ないという説をくちばしる小学校生
緑橋はしろい石橋一年じゅう桜の花につつまれている

溶解ジェネレーション

夜半をすぎめざめるとついているラジオにすだく虫の音放送愉し
歌という川に身を投げながされて脳の多くのデータが溶ける

まちの盛衰

桃と逅った詩人のおどろきいくよへて桃を生みそめる夜の銀座で
幽霊のいないまちはない幽霊しかいないまちならゴーストタウン

小刻みにちかづく

こんにちは海の深みに鮟鱇な私さかなですろうそく立てます
あどけない雷雲みづを落としたら東京はしづみ電流で醒める

未来は変えられる、と

でじたるな浮世に生きて誤字のあるふみ書けなくなる世界が薄れる
葉ひとひらそんなものとして新しい時代に枯れて秋のはなやぎ

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