自 他

みんなと同じになりたかった。
夜の深さを、朝は夜とひと続きなこと、ふらふらな君は昼と顔が違うこと、迎えた朝は、誰よりも自由なこと。他人の視界が自分には持ち合わせていないことに嫌気が差して、夕日を呪っていた。

ずっと。


でも最近、ふと、今はそうじゃないなと思った。
他人と同化したい感情を理解したら、受け入れられるようになった気がする。
反対に、今度は、ちゃんと世界と自分を分けたくなった。「私」として、君に、世界に、認識されたいと願うようになった。
100匹の群れの中で、識別された1匹になりたい。


noteで連載をしていた。
タイトルは「99匹のうちの1匹」。100匹の人間の群れ__大衆の中からこぼれ落ちてしまった1匹を、文学は救ってくれる。それならば99匹の大衆側にいる自分でも、文学は救ってはくれないだろうか、救われたいと、願っていいだろうか、と思って、こんな連載タイトルをつけたのだった。(詳しくは「99匹のうちの1匹」のはじめの記事を読んでいただきたい。そこには書き始めた衝動が綴られているはず。)
これはたぶん同一化の願望が根元にあって、今はもうそうじゃないから、この連載に“おしまい”を付けたい。そう、思い始めている。



3、4年前までは私は「私」として機能していた。
あの場所で自我の出し方を知って、私は私の形を始めた。
いつの間にかそのままじゃ嫌になって、君になりたくて、君の視界が、夜が、自分にないことに悲しくなって、涙を流したあの時間は確かに夜だったのに、作られた暗がりは欲しいモノではなかった。
でもそれを受け入れた先で、私が私だということを形作るものは何もなくて、肺に入れた煙で、やっと私の形は確かにあるのだと思った。
ちゃんと、あるよって言うために、今は書きたいと思う。代替可能じゃなくて、溶けきったアイスが手の上でべたべたになってるみたいなのじゃなくて、世界に立つ個人として、自他の境界をハッキリさせたいと、今はそう思っている。



明日は、知らないけれど。