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ツインギャラリー蔵「脈打つ指先」    オノマトペアート鑑賞会〈嘉春佳 作品群 〉



ステートメント

亡くなった祖母が残した絵手紙をもとに、筆跡をなぞり、縫い留めるうちに、季節の発見を書いたものが多いことに気がつきました。
制作中外に出ると、思いがけなく足元に花が咲いていて、祖母もこうして春の訪れを感じていたのかもしれないと思いました。
2階の作品では、自分が暮らす街で見つけた春の様子を、蜜蝋のオブジェや刺繍によって形に起こすことを試みました。

1階展示(作品12・壁)
1階展示(作品12・棚)
2階展示(作品21)


ひと針ひと針が形作るドットの世界から見える景色

嘉さんの作品は、おばあさまが残した絵手紙に描かれた季節の風景が起点となった作品。そのひと針ひと針がおばあさまの筆運びと重なりあい、景色や時間、気持ちの機微を味わうように布を這う。刺繍でなぞられた絵手紙の世界は、点描にも見えるのですが、運針の渦が巻く画面は、一目するだけでは何が描かれているのかわからない。しかし、それを目を細め、遠くにみたり近くにみたりしてようやく春に咲く黄色い花やそこに添えられた文字が見えてくる。すると、どこからか春の風が吹くような温かな気持ちになるのが不思議です。

そして、階段前の棚にある作品は、制作過程の動画と刺繍の作品と蜜蝋の作品が混じり、おばあさま主体の世界観と作家自身の世界観が混じり合う1階と2階をつなぐような展示でした。

2階には、蜜蝋で作られた春の花が飾られ、嘉さんご自身が見つけた小さな春の兆しが顕れた作品。ここにも、おばあさまが使っていたお茶道具が添えられている。まるで、祖母の家に遊びに来た孫のティータイムを想像させる。そこでは、「あそこで、あんな花が咲いてたよ」「もうすぐ、この花が咲くよ」と会話が交わされているような気分になります。ニョキニョキと春の花が咲き、「ここにも」「あ、あそこにも」とそれを見つけた喜びがじんわりと伝わりました。


みんなのオノマトペ

作品12/手の跡をたどる 2024 古着、刺繍糸、木材、蜜蝋、オイル etc

作品12/手の跡をたどる 2024 古着、刺繍糸、木材、蜜蝋、オイル etc
●4/27(昼の回)ぬくぬく ほっこり ホワー ザラザラッ ふわーん ぷわ〜 ポワーン 
ちくちく ほっこり つん すん みゃくみゃく ゆら じんわり しとしと とろん しんみり しっとり とつとつ テンテン チクチク ユラユラ ザクザクザク ホワン フワー ヒラヒラ●5/4(夜の回)シルルルル スウスウ さわー せせせせ すー ちくちく やわやわ ポン 
ツー ポンポンポンポン テンテンテン しゅんしゅん ふわ ぐるぐるぐる そよそよそよ

作品12(棚)

作品12(棚)
●4/27(昼の回)じんわり ゆら つん すん がさもこ ヒュー とろん コトン モリモリ モリモリ ザクザク ピョコンピョコン ユラユラ
●5/4(夜の回)モサ プス ぐー にゅ ポポポ ふわふわ ポンポン ピンピンピン ニュワニュワ サクサク ポツン ゆらゆら

作品21/Spring Letters from Where I Live
2024 刺繍糸、印画紙、蜜蝋、オイル、野草、祖母のお茶の道具

作品21/Spring Letters from Where I Live 2024 刺繍糸、印画紙、蜜蝋、オイル、野草、祖母のお茶の道具
●4/27(昼の回)ニョキニョキ ムクムク ベロリーン ショワッ シュッシュッ どろん 
ざわざわ おどろおどろ にょろ ちょこん ぞわ ニョキニョキ ツルツル ツブツブ 
ペロン ニョロリ ニュルリ トゥルン
●5/4(夜の回)パラパラ パサッ ピスピス パシパシ カチャカチャ なーなー じょわーん じわじわじわ ポロロン ヌーー ペロン ニョキニョキ ポポポポ ジュワジュワ 
ニュイーン シーン 


ダイアローグ @4/27

・ぬくぬく ほっこり ホワー あたたかな印象(作品12・壁)
・ザラザラッ ふわーん ぷわ~ ポワーン (作品12・壁)
・ちくちく ほっこり 刺繍と鮮やかすぎない優しい色の布の雰囲気(作品12・壁)
・つん すん みゃくみゃく おばあさまとの関係を感じて (作品12・壁)
・ゆら じんわり しとしと とろん 湿ったようなイメージが湧いた(作品12・壁)
・しんみり しっとり とつとつ 少し切ないような寂しいような気持ち(作品12・壁)
・テンテン チクチク 運針の様子と作家さんの手の動きを想像して(作品12・壁)
・ユラユラ 布が揺らめく感じと刺繍された花が揺れるイメージ(作品12・棚)
・ザクザクザク 縫い目が密集しているところ(作品12・棚)
・ホワン フワー ヒラヒラ 絵柄と文字が見えてくるとその景色の雰囲気が伝わってくる(作品12・棚)
・刺繍にかかった時間を感じて、じんわり ゆら はそれが風で揺れる様子(作品12・棚)
・つん すん ヒュー (作品12・棚)
・蜜蝋の削ったものが、がさもこ とろん (作品12・棚)
・コトン 小さな杯の置かれた時の音 (作品12・棚)
・モリモリ ザクザク 蜜蝋の削ったもの (作品12・棚)
・ピョコンピョコン 三つの花 (作品12・棚)
・ユラユラ 上に吊るされた花の刺繍 (作品12・棚)
・ニョキニョキ ムクムク 色々なところから生えている (作品21)
・ベロリーン 地ベタに這いつくばっている草 (作品21)
・ショワッ シュッシュッ 刺繍の表面の感じ(作品21)
・どろん ざわざわ おどろおどろ ぞわ 室内が暗くて怖いものを感じた(作品21)
・にょろ ちょこん そこにあるものの雰囲気(作品21)
・ニョキニョキ ツルツル ペロン ニョロリ ニュルリ トゥルン 蜜蝋で作られた花の雰囲気 (作品21)
・ツブツブ 刺繍の感じ(作品21)

・理解が難しいところもあったけど、温かい作品でした。
・刺繍の作品が落ち着いた中に温かみを感じ、ほっこりして良い感じがしました。

ダイアローグ @5/4

・シルルルル スウスウ 布に針と糸が通っていく感じ (作品12・壁)
・さわー せせせせ すー 刺繍で描かれている風景から感じるイメージ(作品12・壁)
・夜のライトの光が重なって、昼間とは違う感覚(作品12・壁)
・縫っている時の腕の動きが ちくちく やわやわ よしさんの運針を見て、あこれが ちくちく だなとストンときた 
・ポン ツー ポンポンポンポン(作品12・壁)
・絵手紙をトレースする行為がただの刺繍ではなくちゃんと美術になっている
・テンテンテン しゅんしゅん ぐるぐるぐる 縫い跡のリズム(作品12・壁)  
・ふわ そよそよそよ よく見ると縫い跡がうねっていて風になびいているように見えた(作品12・壁)
・モサ 杯の中のもの(作品12・壁)
・プス ポポポ 三つの花(作品12・壁)
・ぐー にゅ 蜜蝋を指で成形しているときの動き(作品12・壁)
・ふわふわ ポンポン(作品12・壁)
・棚にあった三つの花 ピンピンピン (作品12・壁)
・ニュワニュワ サクサク ポツン 三つの杯の雰囲気 (作品12・壁)
・ゆらゆら 上から吊られた刺繍(作品12・壁)
・パラパラ パサッ ピスピス パシパシ カチャカチャ なーなー(作品12・壁)
・じょわーん じわじわじわ 刺繍の糸の粒の集まりと布が皺になった感じ (作品21)
・ポロロン ヌーー 地べたに張り付いた草みたいな葉っぱの感じ(作品21)
・ペロン ニョキニョキ ポポポポ ジュワジュワ ニュイーン 畳の上のいろんなもの (作品21)
・シーン 夜の部屋で作品と自分だけになった時(作品21)

・生死をテーマにした作品で作家の家族をモチーフにしている。あたたかくなく、冷たすぎず、、な印象

まとめ

刺繍で表現された作品のオノマトペは、
ほっこり、ホワーンと柔らかな音のオノマトペが温かで穏やかな印象を想起させます。
作品の元になったおばあさまの視点と柔らかな素材が重なるようにして、
どこか温かなものを伝えているのかもしれません。
そして、ゆら、ユラユラ、ヒュー、そよそよそよといった、風が吹く音や物が揺れる様子を捉えた表現も印象的です。
これも布が醸し出す柔らかさから感じる印象ですが、
そこに描かれた春の風景の中にも同じような穏やかな風を感じていたことがわかります。

一方で、蜜蝋の立体表現では、ニョキニョキ、ムクムク、ペロリーンなど物の動きを捉えたオノマトペがたくさん出てきました。
これは作家自身が見たものを再現していること、あるいは蜜蝋という変幻自在の素材を使って作家の手によって具現化された顕れだからなのか、、
蜜蝋という素材を使うことで、ゼロからイチが生まれるという意識が働き、そこに植物の成長する姿が重なるのかもしれません。
この刺繍と蜜蝋の表現は、全体として同じテーマを扱っていますが、平面と立体と大きく異なります。
その表現の違いが、絵手紙の視点と作家の視点の違いとして、別の視点で広がる世界が見えてくるのかもしれません。

最後に、「どろん ざわざわ おどろおどろ ぞわ 室内が暗くて怖いものを感じた」という意見がありました。
4/27の15時頃の鑑賞会での意見です。この日は一日雨が降ったり止んだするどんよりしたお天気でした。
この日の2階は夜のような暗くて湿り気があり、こんな日は見る側の印象も変わるものだと感じました。
他にも、しっとり、しとしと、とろんなど湿り気を帯びた感覚を感じていて、
その日の天候によっても鑑賞に大きく影響されるようです。

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