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【短編小説】おいしそうな入道雲だったのに

空を見上げて手を伸ばす。
届くわけがないと知っているのに、それでも指でつまんで、口にふくむ想像をした。

夏が終わってほしくなくて少しだけため息を吐く。耳の奥に遺る蝉の残響だけが、わたしの手を引いてくれるはずだった。

その残響の奥で、フジファブリックの「赤黄色の金木犀」が、ぬかるんで待ち構えている。

おわり


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