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【短編小説】誰

小百合の表情を見た瞬間、先週とは見違えるように明るくなっていたので、思わず狼狽してしまった。

おはよう、と向こうから声を掛けられる。私もおはようと返し、一拍空けて聞いてみる。

「もう大丈夫なの?」

私の言葉に小百合はあっさりとうん、と応えた。

「心配かけてごめーん。もう元気になったよ」

たった3日前とは見違えた顔色だ。

私は渡そうと、小百合を励まそうとして買っていた、カバンの中のちょっと良いお菓子の事を考えた。

もう、いいや。

ラッピングされた状態のまま捨てよう、と決心した。

そして、ずっと悩んでくれていたら捨てずに済むのにと、自分でも数日経てば心変わりするような、矛先の違う不満が湧いてきた。

小百合はずるい、とも思った。

先週の小百合は、本当に、心から心配になるような落ち込み具合だった。世界が終わるくらいの。

もう誰も味方がいないくらいの。あんな表情をされたら、だれだって心配になるだろう。

それならお菓子は元気になったお祝いとか言って渡せばいいだけなのに、私にはそれができない。

そしてそのまま、立ち直るのが早い小百合を責める。

本当にずるいのはどっちで、誰なんだろう。

あと一日すればゴミ箱に捨てられる予定のお菓子が、そう言った気がした。

おわり

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